ショートステイを利用するときに家族が知っておくべきこと

ショートステイ(短期入所)は、よく耳にする介護保険サービスの一つです。「ショートステイ」とは、文字通り「短期間ショートステイ事業所の施設に泊まることができるサービス」です。けれど、実際ショートステイは「どういうサービスなのか?」「どうやって利用したらいいのか?」などよくわからない家族も多いのではないでしょうか。

そこで、今回はショートステイを利用する時に家族が知っておくとよい情報やショートステイの利用の仕方についてお伝えしていきます。

ショートステイの種類

一言で「ショートステイ」といっても、介護保険の制度上ではいくつかの種類に分けられています。そのため、ショートステイを利用する時は「どの種類のショートステイ事業所がいいのか?」「親に合っている事業所はどこなのか?」を考えながら選ぶ必要があります。

また、それぞれのショートステイ事業所の特性を理解しておくことで家族も選びやすくなります。

ショートステイは、大きく2種類に分けることができます。「短期入所生活介護」と「短期入所療養介護」です。では、2つの違いは何なのでしょうか。

まず、短期入所生活介護は、特別養護老人ホームなどが短期間の入所(入浴や排泄、食事)の介護などの日常生活上のお世話や機能訓練を提供するものです。一方、短期入所療養介護は、老人保健施設や療養病床のある病院(診療所)などが提供します。サービスの内容は、看護・医学的管理での介護や機能訓練などの必要な医療や日常生活のお世話になります。

また、短期入所生活介護は夜勤の勤務体制が介護職員のみでもサービスが提供できるのに対して、短期入所療養介護に関しては夜勤の勤務体制でも看護師が勤務しなければならないということも異なる点の1つです。

もちろん、短期入所生活介護でも緊急時には看護師へすぐに連絡がつく体制をとっています。そのため、どちらのサービスを利用しても緊急時に対する大きな不安を抱えずに利用することができます。

このように、同じショートステイでも種類によって異なる点があります。まずは、この2種類の違いを把握しておくことで、事業所を選ぶとっかかりで役に立つはずです。ぜひ覚えておいてください。

ショートステイを利用するまでの流れ

上記でショートステイには、提供されるサービス面からみて大きく2種類に分けることができるとお伝えしてきました。次にここでは、ショートステイを利用するまでの流れにも大きな違いがあることについてお伝えしていきます。

実際、ショートステイを利用する利用者や家族にとっては、利用する流れの違いの方が直接な関りがあるためわかりやすいかもしれません。

短期入所療養介護の利用に必要な手続き

短期入所療養介護は、介護保険の制度上「医療系のサービス」として位置づけられています。医療系サービスには、他にもデイケアや訪問看護、訪問リハビリテーションなどがあります。

これらの「医療系サービス」に位置づけられているサービスを利用する際は、必ず「主治医の許可」が必要です。ちなみに、主治医とは基本的に要介護認定を申請した時に意見書を書いてくれた医師のことを指します。

主治医の許可に関しては、担当のケアマネジャーが家族や本人に代わって確認してくれることがほとんどです。そのため、利用を検討したい場合には家族が直接主治医に連絡せずに、担当のケアマネジャーに相談されてみて下さい。

ただ、サービス事業所によっては、診療情報提供書や独自の書類が必要になるケースもあります。その場合は、主治医に一度受診して書類を作成してもらうことが必要です。また、それらの書類作成にかかった費用も本人負担となります。

一方、短期入所生活介護に関しては、医療系サービスではないため上記のような手続きは必要ありません。

ショートステイを利用するのに共通して必要な手続き

シュートステイの種類に関係なく必要な手続きがあります。

まずは、ショートステイを利用する前に、担当のケアマネジャーから利用者の情報提供書を作成してショートステイ事業所へ渡します。さらに、ショートステイ事業所が利用者本人や家族と面談して、そのほかの細かい情報の聞き取りを行います。

ここまでは、どの事業所も同じような流れです。しかし、実際に利用するまでの流れは利用者の状態や事業所によって異なります。

たとえば、面談後に聞き取った情報などをもとにショートステイ事業所内で「利用が可能かどうか?」について判定会議が開かれたり、一度利用者本人にお試し利用をしてもらい状況を確認したりというようにさまざまです。(お試し利用の場合も、サービスを利用した分の利用料金が発生します)

このように、事業所の種類によって必要な書類や利用までの手続きの流れが異なります。そのため、利用に必要な手続きも踏まえて事業所を選択し、利用までの時間にも余裕を持つことが必要です。

すぐにショートステイを利用したい時

しかし、利用者や家族の状況によっては「すぐに利用した」というケースもあります。そのような場合には上記のような手続きに時間をかける余裕もありません。

そのため、短期入所療養介護が必要な場合以外は、主治医とのやり取りを省くことのできる「短期入所生活介護」の事業所がお薦めです。

さらに、短期入所生活介護の中でも判定会議などがなく、比較的利用が可能かどう化の返事がすぐに貰いやすい事業所を担当のケアマネジャーに探してもらうと良いでしょう。

ただ、ここで考えなければいけない重要なことが1つあります。

それは、ショートステイのサービス自体が需要に対して供給が追い付いておらず、利用できる空きがない事業所が多く存在するということです。なぜなら、サービスを利用している方の多くがリピーターで、前々から利用する日程を予約していることが多いのです。

そのため、「突発的に新規で利用したい」というケースや、特に「早急に」という場合には空いている事業所を探すだけでも難しい状況になります。つまり、「どこの事業所にするのか?」を選ぶというよりも「利用の希望日が空いている事業所はどこか?」を探すだけで手一杯になるのです。

このことからもわかるように、どうしても早急にサービスを利用しなければならない場合は、事業所に関してあまり希望の注文は言えないと思った方がよいでしょう。

ショートステイ利用までに余裕がある時

では、早急にショートステイ先を決めなくてもよい場合や、事業所の空きがたくさんある地域の場合には利用までの手続きをどのように踏むことが一番よいのでしょうか。

まずは、家族で「どのような事業所がいいのか」という希望をまとめます。その上で、担当のケアマネジャーに相談して、ケアマネジャーから希望に合うような事業所をいくつか紹介してもらう方法がお薦めです。

また、施設に対する希望は具体的に出すことで、より希望に沿った事業所を選ぶことができます。たとえば、「きれいな所がいい」や「食事が美味しい所」「個室がいい」「ユニット形式がいい」などです。

ショートステイをする部屋にも、多床室と個室があります。多床室は2人~4人部屋を指します。個室になると金額が異なりますが、「1人でゆっくり過ごしたい」という利用者にとっては譲れない条件です。

さらに、事業所によってはユニット形式の場合もあります。ユニット形式とは、10人程度の少人数が1つのユニットで生活する形式です。2001年以降に新しくできた施設はこの形式がほとんどになってきています。ユニット形式のメリットは、少人数の利用者を専従のスタッフが集中してケアできる点からより個別に介護をしてもらえることです。

そして、同じような種類の事業所であっても、そこそこで雰囲気は全く違ってきます。そのため、もし時間が許すのならば、担当のケアマネジャーに紹介してもらった施設へ見学に行ってみるとより良いです。

見学に行くまでの時間がない場合には、家族だけで決めるのではなく、担当のケアマネジャーによく相談して選ぶことをお薦めします。なぜなら、ケアマネジャーはそれまでの経験の中で、たくさんの事業所を見てきていますし、事業所の特色なども家族以上に把握しているからです。

このように、実際にショートステイを利用するまでの流れは利用者本人や家族の状況によって異なります。それは、「どの種類の事業所を利用するのか?」や「利用するまでの期間」などが人によって違うからです。そのため、ショートステイの利用を検討する時はそれらも踏まえて手続きしていく必要があります。

ショートステイ利用の注意点

介護保険サービスを利用し始めたばかりの家族の中には、「ショートステイってどんな時に利用するの?」という疑問を持たれている人もおられるのではないでしょうか。

実際にショートステイを利用する回数や頻度は、本人や家族の状況に合わせて決めるため人それぞれになります。たとえば、介護者である家族が不在になる場合のみ利用するケースもあれば、介護者の休息を兼ねて毎週1泊で利用したり、月に1週間だけ利用したりなど100人いれば100通りの利用の仕方があるのです。

利用の仕方に関しては、担当のケアマネジャーと本人や家族の現状を踏まえて相談しながら決めていくと良いかと思います。ただ、利用の仕方で家族も知っておくべき注意点が2つあります。

1つは、連泊はできますが30日までの連泊が限度であるということです。「ずっと」ショートステイを利用してその施設に泊まり続けることはできません。

なぜなら、ショートステイは在宅介護の1つに位置づけられているからです。つまり、あくまでも「在宅生活」を送る方を対象としたサービスなので、ずっとショートステイサービスを利用して泊まっているということは「在宅生活」を送っていないとみなされてしまいます。

もし、ずっと泊まりたいという希望をしているのであれば、施設入所の選択をする必要があるということになるのです。もちろん、原則なので状況によっては30日以上の連泊ができる例外もあります。

そして、もう1つの注意点は、「ショートステイ事業所は通所サービスではない」ということです。

家族がよく勘違いされているのですが、ショートステイを利用している時も、普段通っている通所サービス(デイサービス)を利用したいという要望があります。しかし、介護保険の制度上ショートステイと通所サービスを同じ日に利用することができません。

あくまでも、通所サービスは自宅から通うことが原則となっています。同じように、ショートステイも日中から夜間を通してサービスを提供するものなので、途中で別のサービスを利用することはできない仕組みになっているのです。

また、サービスの内容に関しても勘違いしている方が多くいる印象を受けます。たとえば、ショートステイはあくまでも日常生活を送る延長線上にある「泊まり」のサービスであって、通所サービスのようにレクリエーションや運動、体操は基本ありません。

しかし、多くの人が通所サービスの延長で泊まれると勘違いされていて、ショートステイ利用後に「退屈だった」「もう行きたくない」などの声を聴くことがあります。もちろん、事業所の方針によってはレクリエーションを行っている所もありますが、何もなくて当たり前だと思っている方が正解に近いです。

このように、ショートステイならではの注意点があります。これらを知らない家族は、当たり前のように「連泊ができる」「リハビリやレクリエーションをしてくれる」と勘違いしてしまって、後々トラブルになります。そのため、サービスを利用する以上、家族も「できないこと」についても理解しておく必要があるのではないでしょうか。

ショートステイを利用する時の減額

ショートステイサービスを利用する場合は、利用者の「世帯所得」に応じて食費と居住費の軽減制度を受けることができることをご存知でしょうか。

介護保険制度で介護サービス費が1割~2割負担に軽減されるのとあわせて、所得の低い方を対象にした軽減制度があります。しかし、ここで注意したいのは「世帯の所得」であるということです。家族全員の前年度の所得に応じて軽減される金額が定められているため、対象になるかどうかは担当のケアマネジャーに相談されてみて下さい。

ただし、制度を利用するためには市区町村の役所で手続きを行って「介護保険負担限度額認定証」を発行してもらう必要があります。さらに、軽減制度は所得の低い方を対象としているため、申請では所得を証明する書類を準備しなければいけません。たとえば、預貯金の写しや申請書類には財産や負債額などの金額の記入を求められます。それらも含めて申請するかどうかを相談しておくことが必要です。

また、申請手続きは担当のケアマネジャーが代行できる自治体もあるため、家族が申請に行けない場合は担当のケアマネジャーに相談されてみて下さい。

このように、ショートステイを利用する前に家族が知っておくべきことがさまざまあります。これらの情報を知っているのと知らないとでは、利用するまでにかかる時間も変わってきます。また、利用していく中での満足度も違ってくるはずです。

なによりショートステイは、通所サービスと違って介護する家族と離れる時間が長くなります。そのためか、利用者本人が「施設に入れられた」と思い込んでしまったり、家族も「自分が楽をしたいから預けて、悪いことをしている」と感じてしまったりするケースが多いように感じます。

しかし、決してそんなことはありません。逆に、これからも継続して在宅生活が送れるように家族の負担を軽減したり、緊急時に対応できたりするサービスがショートステイなのです。家族ではない人に助けてもらうことに対して悲観的にとらえずに利用させれてみて下さい。

そのためには、まずショートスティが「どんなサービスなのか」「どのように利用するのか」を知ることが大切です。ぜひ、今回の「ショートスティを利用する時に家族が知っておくべきこと」を参考にしていただけたらと思います。

なにより、親の介護で悩んだ時は家族だけで抱えるのではなく、ケアマネジャーや介護の専門家に相談されることをお薦めします。