介護リフォームって入院中にできるの?

介護が必要な状況になった時、自宅で快適に生活ができるようにするためにリフォームを考える方も多いのではないでしょうか。

介護保険の制度上では、介護保険適用のリフォームを「住宅改修」といいます。

住宅改修に関して、皆さんの中で疑問にあがることの1つに「利用者本人が入院中でも住宅改修ができるのか?」があります。

入院中に住宅改修をしておかないと退院後すぐの生活が困るから「できて当り前だ!」と思われる方も多いはずです。

では実際に、入院中であっても住宅改修を行うことができるのでしょうか?

そこで、今回はその疑問いついてお話しながら、住宅改修についてのノウハウをお伝えします。

住宅改修ってどんなことができるの?

まず、住宅改修とは、要介護(要支援)認定を受けている方が自宅の手すりの取り付けや段差の解消などを行って、在宅生活を安全に送れるようにする工事のことをいいます。

介護保険では住宅改修にかかった費用の内、1人1軒につき(住民票のある家に関して)20万円まで自治体が9割ないし8割の補助をしてくれます。「1人1軒につき」ということは、引っ越しをすれば(住民票を移せば)また新たに20万円までの補助枠があるということです。

補助金額にはさまざまな条件があるため、ここで少し詳しく説明します。

補助金額の限度額である20万円は1度で使い切らなくても、上限に達するまでであれば住宅改修を行うたびに使用することができます。

たとえば、足腰が弱って家の中の段差を解消するために住宅改修で5万円の補助を受けたとします。さらに、その後体の状態が悪くなって浴槽の変更を行う場合には残りの15万円分の補助を使うことができるのです。

また、要介護度が3段階上がった場合は、再び20万円の補助を受けることができます。

具体的には、「要支援1が要介護3」「要介護1が要介護4」「要介護2が要介護5」のように介護度が上がったケースです。ただし、要介護度が重度になった場合のみの条件であって、軽度になった場合は適用にならないのでご注意下さい。

住宅改修の制度を利用する上で注意が必要なことがもう一つあります。それは、上記でも述べていますが、「住民票のある家」にしかできないということです。

たとえば「介護が必要になって娘さんや息子さんの家に来ている」という話をよく聞きますが、住民票が利用者の自宅にある場合、住民票を移さなければ娘さんや息子さんの家に住宅改修はできません。

また、「利用者の住まいが借家であるケースではどうなるのか?」という質問も多くあります。

借家であったとしても、住宅改修の補助を受けることはできます。ただ、家主さんの了承と署名などが必要になりますので、きちんと確認ができていれば住宅改修することは可能です。

次に、具体的に工事する項目の中で多い箇所としては

  • 手すりの取り付け
  • 段差の解消
  • 滑り防止のための床材・道路面の材料の変更
  • 引き戸への扉の変更(ドアノブの変更)
  • 洋式便器への変更
  • 浴槽の変更

などがあります。

しかし、どこでも手すりが付けられるわけではなく、利用者本人が生活する範囲で必要な箇所のみに取り付けることが可能です。

このことからわかるように、「利用者本人が生活する上で改修が必要な箇所のみ」が工事の対象になります。また、材料に関しても安全性が確認されている物に限られるので、あまりデザイン性は重視できません。

そして、「取り付け」をすることが条件なので(安全性が確認できることが条件)必ず釘を使って壁や床に固定することが必要になります。

入院中住宅改修はできるの?

利用者本人が入院中に住宅改修ができるかできないかで言うと、答えは「できます」

ただし、それにはいくつかの条件を満たす必要があります。そこで、ここでは「入院中に住宅改修を行う時の条件」についてお伝えします。

まず、必ず退院するという保証があることです。また、料金に関しては「償還払い」での対応となります。そのため、自治体が負担してくれる金額に関しては利用者が退院後に手続きを行うことで返還されます。

つまり、入院中に住宅改修をしても、もし退院が伸びたり退院できなくなったりした場合は介護保険の対象ではなくなるということです。また、支払い方法は一旦全額を支払って、利用者が退院後に自治体の窓口へ手続きに行くことで多く支払った分を返金してもらえる償還払いになります。

ちなみに、自治体への手続きは住宅改修を行う業者がしてくれることがほとんどなので、利用者や家族がする必要はありません。しかし、家族も手続きをしなければお金が戻ってこないことを知っておく必要があります。

そして、住宅改修を行うまでの流れの中で重要なことは、住宅改修の業者とケアマネジャーが作成する書類が必須ということです。

この書類を作成するためには、業者やケアマネジャーが住宅改修する自宅を一度訪問し、「どこにどのような改修を行うのか?」ということを検討して確認する必要があります。

また、どのような改修をするのかを決めるためには利用者本人の動作を確認しなくてはいけません。そのため、入院中のケースでは退院前の家屋調査に同行する方法をとることが多いです。

家屋調査とは、病院のリハビリ担当者などが現在の身体状況で自宅での動作を確認し、退院後に安全に生活ができるように、退院までに行うリハビリ内容を確認するために行う調査です。つまり、病院は退院が近くなると実際に自宅に行き「動作の確認」や「危険箇所がないか」などを利用者本人と一緒に調査します。

そこにケアマネジャーや業者が同席して住宅改修の必要性や危険な箇所の検討を行うということです。

そうすることで、利用者も無理に何度も外出をする必要もなく、家族も何度も予定を空ける必要がなくなります。なにより、ケアマネジャーや業者も現在の状態をよく知っている病院の方から情報をもらいながら検討できるため一石二鳥どころか三鳥なのです。

ここで住宅改修が必要だと判断して工事を行うことになったら、ケアマネジャーと業者が書類を作成します。業者が作成した見積書に、利用者本人や家族の署名と捺印もらって業者が自治体の窓口へ申請に行きます。

自治体への申請後、自治体での手続きが済むと「許可通知書」という書類が自宅に届きます。その通知が届けばいよいよ住宅改修をスタートすることができるという流れです。

ただし、一連の流れがスムーズに行ったとしても7日~10日程かかります。通常でも10日~14日はかかるので、申請後すぐに工事ができないということも注意しなければなりません。

このように、退院前であっても必要な書類の作成や申請手続きをきちんと行えば住宅改修は可能です。

実際、みんなはどうしているの?

「入院中にできることはわかったけれど、なんだか面倒そうだし、一旦全額は支払いたくない」と思う人も多くいます。

そこで、ここではそういう方のためにその他の方法についてお伝えします。

ズバリ!

退院日に合わせて工事をする!です。

たとえば、浴室をユニットバスにする工事や、床材や玄関アプローチの工事などは1日では済まないため退院日に合わせて工事をするのは難しいのが現状です。しかし、手すりの取り付けなどの簡単な工事であれば1日で十分に終わるため退院日に合わせて行うことが出来ます。

そうすることで、一旦全額を支払う必要もないですし手続き的にもスムーズに工事を行うことができるのです。

さらに、退院日に工事日を合わせることでもう一つメリットがあります。

それは、利用者本人の身体状況に合わせて工事してもらえるということです。もちろん、事前の調査の時に手すりの高さなどは確認済みですが、再度工事前に確認しながら取り付けることができます。そのため、微妙な使い心地も確認できて工事後のトラブル回避にもつながります。

ただ、先ほど説明したように、すべての工事が当日にできるとは限りません。その場合は、工事までの生活が困ってしまいます。

そのような時にお薦めなのは「福祉用具のレンタル」です。

このやり方は、あまり大きな声では言えないのですが、「工事箇所に福祉用具で代用できるレンタル品を設置してもらい、工事日を待つ」という方法があります。

福祉用具をレンタルする場合、たいていの商品はお試し利用をすることができます。また、室内用や野外用の手すりなど種類も豊富で、たいていの場所にレンタル品の手すりを取り付けることが可能です。

そこで、工事が終わるまで代用になるような福祉用具をレンタルのお試しとして利用します。この方法であれば、工事で取り付けるわけではなので、壁や床に穴が開くなどの心配はありません。さらに、お試し利用なので料金もかからないことが多いのです。

ただ、あくまでも目的としては「借りるかどうかを検討する」という名目でのお試し利用になるため、「工事までの間だけ貸してください」と大きな声では言えません。そのため、一番スムーズに進める方法としては、住宅改修を行う事業所と福祉用具レンタルの事業所を同じ事業所にすることです。

たいていの福祉用具レンタル事業所は、福祉用具の販売や住宅改修も一緒に行っています。そこで、担当のケアマネジャーと一緒に「どこの事業所に住宅改修をしてもらうのか」を検討する時点で、レンタルをすることも念頭に置いて事業所選びを行うことが必要です。

住宅改修を行う事業所については「家のことを任せている工務店がある」という方も多いかと思います。ただ、注意していただきたいことは、介護保険を利用して住宅改修を行うためには決められた業者に依頼しなければならないということです。

具体的には、介護保険の住宅改修を行うという申請を自治体にしている事業所でなければならないため、そのことを確認してみる必要があります。良心的な工務店などは、直ぐに申請をして対応できるようにしてくれるかもしれません。

しかし、お薦めは住宅改修を専門で行っている事業所にお願いすることです。なぜなら、介護保険での住宅改修になると工事の際に提出が必要な申請書類の種類も多くなるからです。また、「介護が必要な方」に対しての工事になると、専門知識も兼ね備えた専門の事業所の方が安心で工事も早くすみます。

このような点からも、福祉用具のレンタル事業所と住宅改修を一緒に行っている事業所は専門知識を兼ね備えているスタッフも多く安心といえます。さらに、「工事日までの間だけ福祉用具を借りること」に関してもスムーズにやり取りができます。

その他の制度

住宅改修に関しては、20万円まで1割ないし2割の自己負担ですが、大掛かりな工事になってくると20万円では足りないことがほとんどです。

そのような場合のために、自治体独自に「住宅改修の限度額を越えた場合に利用できる制度」を設けていることがあります。ただ、この制度のほとんどが世帯の所得に応じた制度であることが多いため、世帯の所得が多い方は対象外になります。そのため、まずは担当のケアマネジャーに確認してみて下さい。

また、自治体独自にリフォームの支援などを行っている地域もあるため一度調べてみることをお薦めします。調べる方法としては、インターネットで「地方公共団による住宅リフォームに関する支援制度検索サイト」で検索すると全国の支援事業をみることができます。

今回は、入院中に住宅改修を行うケースについてお伝えしました。住宅改修に関しては、自治体によって「できる工事」と「できない工事」に違いがあったり、その他の制度も異なったりすることがあります。

そのため、細かな制度については担当のケアマネジャーや自治体に確認しながら、活用できる制度を十分に活用して安全な在宅生活が送れるように環境を整えて頂きたいと思います。