在宅で親(または配偶者)の介護をしている家族(以下、家族)が「もう、これ以上の介護は無理……」ということを感じたとき、老人ホームに親を預けることを検討するようになります。
とはいうものの、親を老人ホームに入れることに対して負い目を感じ、「まだ老人ホームを探す時期としては早いのでは?」というように考えてしま人は少なくありません。そして、実際に老人ホームを探すことができない方(家族)は多いです。
こうしたことの根底には、家族の「もう少し私が介護を頑張れば、親も在宅生活が継続できる」という想いがあります。この「もう少し」という基準を定めることができないのが、介護をする家族を苦しめる原因にもつながっています。
それでは、老人ホームを探すタイミングとして最も適した時期は、一体いつなのでしょうか?
今回は、実際に老人ホームを探し始める3つのタイミングをご紹介します。
老人ホームに入居する方(以下、入居者)が自ら探すケース
老人ホームには「ケアハウス」や「特別養護老人ホーム」など、いろいろな種類があります。これらは、入居者の心身状況に応じて利用すべき施設が異なります。
一般的には、自宅での生活が難しくなってから老人ホームを探し始めるケースが多いです。そのような状況では、入居者自身で老人ホームを探すことができないため、入居者を介護する家族が介護施設を選ぶことになります。
その一方で入居者の中には、将来の生活で困らないよう早めに老人ホームに入所する方もいます。こうしたときは、入居者が自ら気になる老人ホームを見学しながら利用する施設を選びます。
このようなケースでは、自立した生活を送れる入居者が多いです。そのため、入居者を支える家族としては「まだ、老人ホームに入所しなくてもいいのではないのか?」と思われるかもしれません。
しかしほとんどの場合、入居者は家族に迷惑をかけない(家族が介護の負担を感じる前)ために老人ホームを探しています。
そうしたことから、家族が「まだ、老人ホームに入らなくても私たちが支えるから大丈夫よ!?」と声をかけても、入居者の気持ちが変わらないようでしたら、そのときが老人ホームを探すタイミングとなります。
このようなときは、納得のいく老人ホームを入居者が見つけることができるように、家族は入居者の施設見学などに同行しながらサポートしてあげましょう。
家族が老人ホームを探しているが、入居者は入所を拒否しているケース
家族が入居者のために老人ホームを探すとき、老人ホームへの入所について「入居者がどう考えているのか?」ということを、事前に本人へ確認することは大切です。
なぜなら、入居者の多くは「住み慣れた自宅を離れたくない」と考えているからです。
そのためこうしたケースでは、家族が老人ホームへの入所を入居者に勧めたとき、必ずと言ってよいほど「まだ、自宅で生活ができる(老人ホームには入りたくない)」という返事が返ってきます。
このようなとき、入居者の老人ホームを探すタイミングはいつになるのでしょうか?
老人ホームへの入所を入居者から拒否された場合は、入居者自身が自宅での生活に限界を感じるまで、家族は待ち続ける(または、説得を続ける)しか方法はありません。
ここで言う、「自宅での生活の限界」というのは、具体的にどういった状況なのでしょうか? それは、「家族や在宅の介護サービスだけでは安心した生活が送れない」と入居者自身が感じたときになります。
とはいうものの、入居者が「老人ホームに入所してもよい」という意思決定をする前に、介護をする家族が先に体力の限界に達してしまう場合もあります。
そうならないためにも、入居者の介護に少しでも負担を感じたときは、在宅の介護サービスを多めに利用するようにしましょう。そうすることで、家族の介護負担が減るため、入居者が自宅での生活に限界を感じるまで、家族は待ち続けることができます。
入居者が入所を拒否していても、家族は老人ホームを探さなければならないケース
これまで「入居者の意思で老人ホームを探すタイミング」と「家族の希望で老人ホームを探すタイミング」についてご紹介しました。
そして、最後にご紹介するのは、「明らかに自宅での生活は困難なので、老人ホームを探すしかない」というケースです。
入居者にとって在宅の生活が困難であるというのは、どういった状況なのでしょうか?
具体的な例として、「母親が自宅の浴室で転倒して股関節を骨折したが、入院中の病院では一人で歩けるようになるまでは回復していない」というケースで考えてみましょう。
こうようなとき、特に問題になってくるのが、介護が必要な方(以下、要介護者)のトイレ介助です。
要介護者が一人でトイレに行けないということは、常に誰(主に家族)かが排泄の介助(または、オムツを着用)をしなければなりません。介護する家族が仕事をしていないのであれば、定期的に要介護者の排泄を手伝うことも可能でしょう。
しかし、この介護を24時間365日続けるとなれば、いずれ限界に達します。
このような状態になったときは、要介護者も言葉には出さなくても「自宅には戻れそうにない」というように感じています。そのため、「自宅での介護はできない」と家族が判断したときが「在宅の生活が困難な状況」と言えます。
家族の介護が無ければ要介護者も自宅での生活ができないため、自分(要介護者)の主張を通すことができません。
そのため、入居者が老人ホームへの入所を拒否していても、本人だけでは自立した生活ができないので、家族が入居する施設を探すことになります。
以上、老人ホームを探し始める3つのタイミングをご紹介しました。
この3つのタイミングにあなた(入居者、もしくは家族)の状況をあてはめることで、「老人ホームを探すための適切な時期」を見極めることができます。
その他、老人ホームを探す人の中には、まだ施設に入所する必要がないときから情報を集めようと考える方もいます。事前に介護施設について調べておくことは大切ですが、実際に入所するときの入居者の心身の状況によっては、入所を希望する老人ホームの入居基準に合わない場合もあります。
そうしたことから、事前に老人ホームを探す場合には、各施設の情報を集めるのではなく、「老人ホームにはどういった種類(ケアハウスや特別養護老人ホームなど)があるのか」ということを学んでおくことが大切です。
そうすることで、要介護者を在宅で介護することが困難になったとき、入居者に合った老人ホームを慌てずに探すことができます。