在宅での介護が困難になって老人ホームを探す場合、「種類がたくさんありすぎてわからない……」と悩まれる方は多いです。
老人ホームの種類には「特別養護老人ホーム」「養護老人ホーム」「介護付有料老人ホーム」などがあります。どれも似たような名前ですが、入居基準や毎月の費用はそれぞれ異なります。
例えば、要介護3以上の認定がおりていないのに「特別養護老人ホーム」を探したり、認知症の症状が悪化しているのに「養護老人ホーム」を探したりする人もいます。
ただ、そうした場合には、入居基準に合わないために施設から入居を断られ、無駄足に終わってしまうことも少なくありません。
そうならないためにも、まずは老人ホームに入居する方(以下、入居者)の体の状態と、その人が利用できる老人ホームを整理しておくことが大切です。
今回は「老人ホームを探す前に整理すべき5つのポイント」について解説します。
老人ホームを探す前に整理すべき5つのポイント
入居者の置かれた状況にあった老人ホームを探すためには、あらかじめ入居者の情報を整理することが大切です。そうすることで適切な施設を見つけることができます。
どの地域の老人ホームを探すのかを決める
老人ホームは日本全国の至るところにあります。そのため、まずは「どの地域で老人ホームを探すのか」を決めておくことが大切です。ここで、入居する地域を決めるには、どうすればいいのでしょうか? 地域を決めるときは、主に2つの視点から考える必要があります。
1つ目は、老人ホームに入る入居者の視点です。
入居者の中には「慣れ親しんだ土地を絶対に離れたくない」と望まれる方は多いです。また、「私(入居者)の体の状況をよく理解してくれている病院の先生を変えたくない」というような不安を訴えてくる方もいます。
当然、老人ホームを決める際には、こうした入居者自身の希望を考慮することが大切です。
2つ目は、入居者を支援する家族(以下、家族)の視点です。
家族の中にも「なるべく施設に毎日通って、母(または父)に会いたい」と考える人もいます。
その一方で、「毎日仕事と自分(家族)の家庭で精一杯なので施設に通うことはできない」という理由から、「母が望むならどの地域でもいい」と考える人もいます。
このように、老人ホームを決めるときには、入居者本人だけでなく、その家族の希望も考慮する必要があります。
実際に、この2つの視点はどちらを優先させるべきでしょうか? そのことを見極めるポイントは「入居者の判断能力」です。
例えば、体が不自由であっても、入居者の認知機能がしっかりとしている場合は、入居者目線で考えることが大切です。そうした際には、たとえ入居者が希望する地域が家族と離れた場所であっても、最終的に決定権があるのは入居者自身です。
そういった判断をされる方の中には「家族にはなるべく迷惑をかけたくない」と考えている人も多いです。
そのため、入居者を支える家族が「私(息子や娘)の家の近くの老人ホームの方が頻繁に会いに行けるよ!」と声をかけても、入居者の意見が変わらない場合は、その意志を尊重してあげましょう。
しかし、体は元気であっても認知症を発症して入居者の判断能力が無くなってしまった場合はどうでしょうか?
入居者は「慣れ親しんだ土地を絶対に離れたくない」といわれるかもしれません。このように、たとえ入居者自身の判断能力が無くなっても、その人自身の主張が無くなるわけではありません。
入居者を支援する家族には、こうしたことが原因で振り回されてしまうケースもあります。
しかし、入居した後に入居者が体調を崩したり、他の入居者とトラブルを起こしたりした時に、対応するのは誰になるのでしょうか? そういったときに駆け付けなければならないのは、やはり家族なのです。
そのため、「家族がなるべく駆け付けやすい地域で施設を探す」という考え方は必要です。
こうしたことから、判断能力が低下した入居者の老人ホームを探す場合は、家族の視点に重きをおいて、地域を決められることをお勧めします。
毎月の予算を決める
入居者が老人ホームに「どれくらいの期間入居するのか?」ということは、誰にもわかりません。そのため、「毎月の費用をいつまで支払っていけるのか?」については、老人ホームを探す前に検討しておくことが大切です。
どんなに気に入った老人ホームを見つけても、予算を超えているのであれば、入居することはできません。
そのため、「毎月の支払いが可能な金額」とその金額を「いつまで払い続けられるのか」をシミュレーションしておくことが大切です。そして、シミュレーションをするときは、入居者の年齢と心身の状況によっても変わることを考慮した上で行わなければなりません。
例えば、70代前半で入居する方だと入居期間が10年を超える可能性は高いでしょう。しかし、90代後半の方だと5年以内に退去となるかもしれません。
また、認知症を患っているけれども、その他の病気が全くなく足腰もしっかりとしているという方であれば、入居期間が長くなる可能性は高いでしょう。しかし、誤嚥性肺炎(細菌が唾液や胃液と共に肺に流れ込んで生じる肺炎)を繰り返されているような方だと、入居期間が半年で終わることもあります。
このように、入居者の置かれた状況によって、入居期間は大きく異なります。
ここで、「老人ホームに入居させる前から、人生の最期を迎えることまで想定しておくなんて不謹慎だ!」と思われる方もいるでしょう。
しかし、もし毎月の支払いが出来なくなってしまえば、最終的には老人ホームを退去しなければならないのです。そうならないためにも、計画どおりに払い続けることができる予算を立てた上で、入居する老人ホームを決めるようにしましょう。
老人ホームをいつまでに選ぶか期限を設定する
入居者に合った老人ホームを見つけるためには、しっかりと時間をかけて探すことが大切です。
しかし、実際には「入院している病院から3ヶ月以内に老人ホームを探してください」と急かされることもあります。また、「認知症が進行して、家で介護できるような状況ではなくなった」と慌てている状況で、ゆっくり探す時間がない人もいます。
基本的に老人ホームは、「入居希望者がいつでも申し込めるように、いつもお部屋は空けておきます」という体制にはなっていません。
老人ホームの経営者は、適切に施設を運営していくため、いつも満室の状態にしておきたいと考えています。
入居者やその家族が気に入った施設の空き部屋が出るまで待っていられる状況であれば、現在の空き状況を確認しながら老人ホームを探す必要はありません。しかし、すぐに入居できる老人ホームを見つけなればいけない状況であれば、現時点で空き部屋があるところから選ばなければなりません。
そうしたことから、効率的に老人ホームを探す場合は、「いつまでに」という期限を設定してから各施設の情報を集めていくことが大切です。
老人ホームを探す目的を意識する
老人ホームを探すときの目的には、以下の3つのような例が挙げられます。
・自炊が困難になって食事の用意をしてもらいたいため
・脳梗塞の後遺症による麻痺などで、介護が必要になったため
・現在入っている有料老人ホームの支払いが大変になったため(特別養護老人ホームへ移りたいと考えて)
老人ホームには「軽費老人ホーム」「介護付有料老人ホーム」「特別養護老人ホーム」など、いろいろな種類があります。そして、施設の役割はそれぞれ違います。
そのため、老人ホームを探す目的を決めていない状況で施設の情報を集めてしまうと、入居者や家族の希望に合わない施設を選んでしまう可能性は高くなります。
入居した後に、「入居者の状況に合っていない施設を選んでしまった……」と気がついても取り返しはつきません。後から引っ越すこともできますが、生活環境を何度も変えるのは、入居者にとって大変なストレスとなります。
そうならないためにも、入居者と家族の老人ホームを探す目的を決めてから、各施設の情報を集めるようにしましょう。
現在、そして将来の介護認定を見極める
すでに「要支援」もしくは「要介護」認定がおりている人については見極めが簡単です。ただ、老人ホームへの入居を検討している人の中には、介護保険の申請中で、まだ認定がわからない人もいます。
なぜ、老人ホームを探す前に介護認定の見極めが必要なのでしょうか? それは、介護認定に応じて入居できる施設と入居できない施設があるからです。
老人ホームの入居基準は、施設の種類によって、それぞれ違います。
例えば、介護サービスを利用しなくても日常生活が送れる「自立」の方でも入れる軽費老人ホームもあれば、「要介護3以上」の方が対象となる特別養護老人ホームもあります。
その他にも、同じ種類の介護付有料老人ホームであったとしても、「自立」の方から入居ができる施設もあります。その一方で、「要介護1以上」の方でないと利用できないところもあります。
このように、老人ホームの種類や施設によって入居基準は異なります。
中には、「施設の雰囲気はとても良かったけど、現在の要介護認定では申し込めない」ということはよくあります。そのため、最初の段階で要介護認定を見極めながら老人ホームを探すことが大切です。
以上、5つのポイントを整理することで、あなたがどういった老人ホームを探すべきか判断することができます。
中には、「整理するポイントが多すぎてよくわからない……」と思われた方もいるでしょう。しかしながら、このポイントを考慮せずに老人ホームを探してしまうと、あなたが希望する老人ホームを見つけられない可能性は高まります。
そうならないためにも、老人ホームを探す前には、しっかりと時間をかけて今回ご紹介した情報を整理することが重要になります。
情報を整理した後はスムーズに老人ホームの種類を絞っていけるようになるため、ぜひ実践してみてください。