「認知症」と「もの忘れ」の違いを見極める方法

最近、親(もしくは配偶者)が忘れっぽくなったのを「認知症ではないか」と悩まれていないでしょうか? ですが、「もの忘れ」があるだけでは認知症だと決めつけることもできません。

確かに、病院で検査を受ければ「認知症」であるかをすぐに知ることができます。しかし、本人(認知症の疑いのある方)を病院に連れていくことはなかなか難しいです。なぜなら本人も「自分が認知症になんてなるはずがない」と考えており、家族も「親が認知症になるはずがない」「認知症になってほしくない」と思っているからです。

そして、病院自体には行くことができても、「もの忘れ外来」や「精神科」へはなかなか足が向かないものです。

認知症の診断は医師にしかできません。ただ、私たちでも日常生活の中で認知症を見極めることはできます。家族などの身近にいる人が、認知症に気付くことが出来れば、早期発見・早期対応につながり、認知症の進行を予防することにつながります。

家族や身内の人が知らない間に、認知症を進行させないためにも、認知症の見極め方について理解しておくことが大切です。

一見すると、認知症と同じように思える「もの忘れ」ですが、「加齢に伴うもの忘れ」と「認知症によるもの忘れ」では大きな違いがあります。この違いを知ることで、医師でなくても「認知症」を見極めることができます。

そこで今回は、「認知症ともの忘れにおける3つの違い」について説明します。

「認知症」は体験したこと全体を忘れる

人の記憶は、出来事を覚える「記銘(きめい)」、忘れずに記憶する「保持」、思い出す「想起」の3要素で構成されています。加齢に伴う「もの忘れ」は、これら3つの要素のうち想起ができなくなって引き起こされるものです。

それに対して認知症は、脳の病気により出来事自体を記銘することができなくなるのです。

例えば、私たちでも数日前の夕食メニューを思い出せないことはあります。しかし、夕食を食べた日の様子や、誰と一緒に食べたかなどを連想すると思い出すことができます。そして同じように、加齢に伴う「もの忘れ」であれば、時間を要すかもしれませんが、たくさんのヒントを出すことで思い出すことができます。

また、たとえメニューを思い出すことができなかったとしても、夕食を食べたことは思い出すことができるはずです。

それに対して、認知症であれば、夕食を食べたこと自体を忘れてしまいます。そのため、認知症になるといくらヒントを出して時間をかけても思い出すことができません。

このように、体験したことの一部を忘れる「もの忘れ」と違い、体験したこと全体を忘れるのが「認知症」です。つまり、認知症の人は夕食を食べたこと自体を覚える(記銘する)ことができないので、「夕食のメニュー」だけでなく「夕食を食べたこと」も忘れてしまいます。

もの忘れしている自覚がない

認知症の人も初期の段階では、自分の「もの忘れ」を自覚している場合があります。しかし、認知症の症状が進行すると、自分が忘れていることを自覚できなくなります。それに対して、加齢に伴う「もの忘れ」の人は忘れていることを自覚しています

例えば、約束の時間を忘れても、あとから指摘されれば私たちは「しまった」と思い出します。ですが、認知症の人は約束の時間を「忘れている」のではなく、「覚えていない」のです。はじめから覚えていなければ「そんな約束したかな……」と、本人には忘れていることに対しての自覚がありません。それだけでなく、「そんな約束はしていない!」と怒ることもあります。

このような場合、加齢に伴う「もの忘れ」の人は、次に同じ失敗をしないように「メモを残す」などの対策をとります。その一方で認知症の人は、忘れている自覚がないので対策をとることもなく同じ間違いを何度も繰り返す傾向にあります。

認知症の人が何度も同じ質問を繰り返すのも、本人に自覚がないからなのです。このことからも分かるように、何度も同じ事を尋ねてくる場合は認知症を疑う必要があります。

「もの忘れ」が進行していく

また、加齢に伴う「もの忘れ」が進行しにくいのに対して、「認知症」は進行していく病気です。つまり、認知症では、忘れる頻度が多くなったり、今までなら忘れなかったような大事な物事を忘れてしまったりなど「もの忘れ」の度合いが悪化していきます。

例えば、認知症になると毎週のように楽しく通っていたカラオケ教室の曜日を間違えたり、通いなれた場所への道のりを間違えたりします。また、特に新しい物事を忘れやすくなるため、約束したことを覚えていないことも多くなります。

このように、高齢による「もの忘れ」に比べて認知症になると生活していく上でも少しずつ支障が出てくることが大きな特徴です。また、本人(認知症の人)は、忘れていることを自覚していないので、そのことを指摘されると怒り出すことも特徴の一つです。

これらの3つの違いをもとに判断することで私たちでも日常生活の中で認知症と「もの忘れ」の違いを見極めていくことができます。

ただ、そうはいっても相手は70年、80年と生きてきた人生の先輩です。特に認知症の初期では、忘れていることを上手く誤魔化そうとされる方もいます。そのため、認知症の症状を見逃さないようにするためにも、1度のチェックではなく、何度か場面を変えてチェックしていくことをおすすめします。

認知症は早期に発見することが出来れば、内服薬で進行を遅らせることが可能です。しかし、逆にサポートの仕方を間違えれば認知症を悪化せてしまうこともあります。だからこそ、周りの家族が日ごろから気にかけて、認知症を見極めていくことが重要なのです。

また、上記を参考にした上で認知症だと思われる場合は、専門知識を持つ人や、かかりつけ医に相談することをおすすめします。認知症介護は決して家族だけで抱え込まないことがとても大切です。

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