知っておきたいデイサービスとデイケアの3つの違い

介護保険制度については、テレビや新聞などでも取り上げられることが増えてきています。そのため、介護保険サービスの一つである「デイサービス」「デイケア」という言葉を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。

ところが、肝心なデイサービスとデイケアの違いについて知っている人は少ないのが現状です。

多くの方は、親や身近な人に介護が必要にならない限り、介護保険制度について学ぼうとは思いません。もちろん、親や配偶者が介護サービスを利用する際には、勉強をしていなくても、担当のケアマネージャーにアドバイスをしてもらうことで、利用するサービスを紹介してもらうことはできます。

しかし、最終的に「どのサービスを利用するのか?」を決めるのは、利用者本人と家族です。そのため、家族も介護サービスについて正しい知識を持っておく必要があります。

同じサービスのように思われやすいデイサービスとデイケアですが、実は3つの大きな違いがあることをご存知でしょうか。

そこで今回は、「家族が知っておきたいデイサービスとデイケアの3つの違い」についてお伝えします。

サービスの目的が違う

まず、デイサービスとデイケアでは「提供するサービスの目的」に違いがあります。

デイサービスの目的

デイサービスは、介護保険制度の中で「在宅サービス」の1つとして位置づけられています。正式名称は、「通所介護」です。

主に、食事や入浴などの日常生活援助や、レクレーション、機能訓練などを提供するサービスです。

介護保険制度の上では、「利用者の社会的孤立感の解消」や「身体機能の維持・向上」「家族の介護負担軽減」を図るものとされています。

具体的には、加齢や病気に伴って一人での入浴や調理、食事が難しくなった方に対してサービスを提供します。また、サービスを提供して、「利用者本人が社会との交流を図ること」や「介護を行っている家族の負担を減らすこと」を目的としています。

デイケアの目的

それに対して、デイケアは「リハビリテーション(以下、リハビリ)」が主な目的です。

デイケアは、介護保険制度の上でデイサービスと同じ在宅サービスに位置づけられています。正式な名称は「通所リハビリテーション」といいます。

デイケアは、入浴や食事の援助も行いますが、主に専門的なリハビリテーションを提供するサービスです。

介護保険制度では、「身体的機能の維持・回復」「認知症状の軽減と落ち着きのある日常生活の回復」「ADL(日常生活動作)・IADL(手段的日常生活動作)の維持・回復」「コミュニケーション能力・社会関係能力の維持・回復」「社会交流の機会増加」を図るものとされています。

具体的には、退院後で体力が落ちている方や加齢に伴って足腰が弱ってきている方がリハビリに通って、日常生活に必要な機能を取り戻すことを目的としています。

このように、デイサービスが生活や他者との交流支援を主な目的としているのに対して、デイケアではリハビリテーションによって利用者自身の機能を回復することに重点を置いています。

利用する人の目的が違う

また、提供しているサービスの目的が違うということは、利用されている人も異なります。

たとえば、デイケアにはリハビリを目的に通っている人がほとんどです。そのため、一日の過ごし方も集団リハビリや個別リハビリが中心になります。

もちろん、食事や休憩時に他者との交流を図ることもできますが、積極的にコミュニケーションを図る目的で通われている方は少ないのが現状です。

それに比べてデイサービスでは、他者との交流が主な目的の1つになります。1人で黙々とレクレーションを行うというよりも、他者やスタッフとコミュニケーションをとりながら過ごす時間が多くなります。

デイサービスでも体操や足上げ、歩行などの機能訓練を行うことはできます。しかし、必ずしも専門職が配置されているというわけではありません。

そのため、デイサービスを利用する人のほとんどは、リハビリよりも他者との交流を目的に通われている方が多くなるのです。

目的によって利用時間が違う

さらに、デイサービスとデイケアでは利用する時間帯にも違いがあります。

デイサービスは、特別な場合を除いて、午前中から夕方の5~7時間程度の利用が基本です。しかし、デイケアはリハビリを目的としているため、個人によっては1~2時間という短時間での利用も可能な仕組みになっています。

そのため、「退院直後で体力が余りない方」や「大勢の人が集まる場所が苦手な方」でも利用しやすいサービスになっています。

たとえば、「デイサービスは遊びに行っているようだから嫌だ」という親であっても、リハビリという目的を持った短時間のデイケアであれば薦めやすくなります。

また、デイケアは病院や診療所と併設していることがほとんどです。親にとっても病院に通っているような感覚を抱きやすくなっています。

このように、デイサービスとデイケアでは利用している人や一日の過ごし方、利用時間にも違いがあります。

親に合った通所サービスを利用するためには、デイサービスやデイケアに通う目的をきちんと整理して選ぶことが大切です。

事業所の運営基準が違う

次に、デイサービスとデイケアでは「事業所を運営するために必要な基準」に違いがあります。

一見、利用する側には「事業所の運営基準」などは関係ないように思われますが、実は事業所を選ぶ上で必要な情報です。

なぜなら、事業所の運営基準をみることで、そのサービスの特色を知ることができるからです。そこで、デイサービスとデイケアの基準を比べてみます。

デイサービスの基準

デイサービスは都道府県知事の指定を受けることができれば、民間の事業者でも開業することができます。

設備の基準も、利用定員に合わせた建物の広さやトイレの設置、防災設備、送迎車の確保などが取り決められている程度です。そのため、民家を改装してデイサービスを開業する事業者も多くみられます。

また、スタッフの配置基準もデイサービスの規模に合わせた人数を確保しなければいけない決まりになっています。具体的には、管理者、生活相談員、看護師、機能訓練指導員、介護職員です。1日の利用者が増えると、それに合わせて介護職員の人数も必要になる仕組みになっています。

このように、デイサービスは「民間の事業者でも参入しやすい」という利点を生かして、介護保険サービスの中でも事業所が多く展開されています。そのため、各事業所が独自の特色を出して利用者確保につなげているのです。

たとえば、1日の利用定員を少なくしてアットホームな雰囲気を出している小規模デイサービスや、認知症を専門とした認知症対応型デイサービスなどがあります。その他にも、緊急時にお泊りができる事業所や生活リハビリに力を入れている事業所もあるのです。

デイケアの基準

デイサービスに対してデイケアは、病院または診療所、介護老人保健施設に限り、事業者となることが認められています。そのため、地域によってはデイサービスに比べて、デイケアの数が極端に少ないところもあります。

建物の広さなどは、1日の利用定員によって決まっています。デイケアはデイサービスに比べて、大規模な事業所が多く、中には1日の利定員が100人程度の所もあります。

また、デイケアの管理者は医師でなければいけない決まりです。その他にも、看護師やリハビリ専門職(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士のいずれか1名)を必ず配置することが決められています。

デイケアでは理学療法士や作業療法士、言語聴覚士などの専門職がリハビリを主に行います。そして、リハビリを主な目的にしているため専門のリハビリ機器を多く設置していることが大きな

このように、デイケアは病院や診療所に併設されていたり、管理者である医師が配置されていたりと、医療面の管理が必要な方には心強いサービスになります。

しかし、デイケアの規模や専門職(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士)の人数によってリハビリの内容が異なる場合があるため確認が必要です。例えば、言葉の訓練や嚥下(ものを飲み込むこと)訓練を専門としている言語聴覚士が配置されておらず適切なリハビリができない場合もあります。

また、理学療法に力を入れている事業所であれば、筋肉をつけるための機器を中心に設置していることもあります。そういった施設では、療法士による個人リハビリに充てる時間が短く、指導下での自主訓練が多くなる場合もあるため、見学などで確認することがお薦めです。

このような理由から、デイサービスやデイケアの違いや各事業所を比べる時には、事業所の規模や人員配置についても見比べることが必要です。

以下に、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士についてまとめます。

理学療法士・・・体操や運動、マッサージなどによって、日常生活に必要な基本動作を行う機能の維持・回復を行う理学療法を専門にしている。

作業療法士・・・工芸や手芸、家事など日常活動と同じ動作を通じて、心身の機能や社会適応力の維持・回復を図る作業療法を専門にしている。

言語聴覚士・・・発声や発語などの言葉の訓練、嚥下の機能訓練などを行う言語聴覚療法を専門にしている。

利用できる人が違う

これまでは、デイサービスとデイケアの事業所の違いをお伝えしてきましたが、そもそも「親が利用できる条件を満たしているか?」ということを確かめる必要があります。

介護保険制度を利用するためには、まず、要介護(要支援)認定を受けなければいけません。要介護認定を受けるためには、住民票のある市区町村に必要な書類を提出して、認定調査を受けることが必要です。

要介護認定の判定後、1人1人に「要介護区分」が出ます。要介護区分とは、被介護保険者証に印字されているもので、「要支援1.2」または「要介護1~5」などのことを指します。

もし、要介護区分で「自立」と判定された場合は、介護サービスを受けることはできません。ただ、介護サービスの利用が必要であれば、市区町村が行っている「介護予防・日常生活支援総合事業」のサービスを検討してみてはいかがでしょうか。

「介護予防・日常生活支援総合事業」に関しては、各市区町村によって内容が異なるため、お住まいの市区町村に確認が必要です。

デイサービスを利用できる人

デイサービスを利用するためには、要介護区分で「要支援1.2」又は「要介護1~5」という認定結果が必要です。

一言でデイサービスといっても、要支援の方が利用する「介護予防通所介護」と、要介護の方を対象とした「通所介護」に分けられます。

大抵のデイサービスは、要支援と要介護の方を受け入れることができるように、介護予防通所介護と通所介護の両方で指定を受けています。そのため、介護認定が出ている方であれば、ほとんどのデイサービスが利用できると言えます。

デイケアを利用できる人

デイケアも、要介護の方が利用できる「通所リハビリテーション」と要支援の人を対象とした「介護予防リハビリテーション」があります。

デイケアを利用するためには、デイサービスと同じように要介護認定を受けていることが必要です。さらに、主治医から「リハビリが必要である」と判断された人でなければ利用することができません。

そのため、まずは担当のケアマネージャ―に「デイケアを利用したい」という意志を伝えて下さい。それから、担当のケアマネージャ―を通してデイケア事業所や主治医と連携を図り、「デイケアを利用できるか?」を確認します。

デイサービスに比べて、デイケアは医師の指示のもとでリハビリが行われるため、利用できる人も限られています。介護保険サービスだからといって、誰でも利用できるわけではないため注意が必要です。

このように、デイサービスとデイケアでは、大きく分けて3つの違いがあります。

介護サービスを選択する時は、まずは親(または配偶者)が「これからどのような生活を送りたいのか?」「どのような目的でサービスを利用するのか?」を整理することが大切です。

ぜひ今回の「家族が知っておきたいデイサービスとデイケアの3つの違い」を参考にして、親により合ったサービスを利用できるように家族で話し合ってみて下さい。

また、家族だけではなく担当のケアマネージャーなど、介護相談の専門家にも相談しながら検討していくことをお薦めします。

以下に、デイサービスとデイケアの違いをまとめます。

 デイサービスデイケア
正式名称
通所介護
(介護予防通所介護)
通所リハビリテーション
(介護予防通所リハビリテーション)
サービス利用条件通所介護:要介護1~5の人
介護予防通所介護:要支援1.2の人
通所リハビリテーション:要介護1~5の人
介護予防通所リハビリテーション:要支援1.2の人
どちらも、医師がリハビリが必要であると判断することが条件
(主治医の意見書などによって)
サービスの目的①利用者の社会的孤立感の解消
②身体的機能の維持・向上
③家族の介護負担軽減



主に、入浴・食事・レクレーションを行い、利用者の生活の質向上と介護者の負担軽減を目的としている
①身体的機能の維持・回復
②認知症状の軽減と落ち着きある日常生活の回復
③ADL(日常生活動作)、IADL(手段的日常生活動作)の維持・回復
④コミュニケーション能力と社会関係能力の維持・回復
⑤社会交流の機会の増加

主に、リハビリを行い身体的機能おの維持向上を目的としている
事業所の基準各都道府県知事に指定を受けた「指定通所介護事業者」
または、「基準該当通所介護事業者」
*基準該当通所介護事業者とは
 老人デイサービスセンター、特別養護老人ホーム、養護老人ホーム、老人福祉センターなど
病院または診療所、介護老人保健施設
事業所の人員基準管理者・・・1名
生活相談員・1名以上
看護師・・・1名以上
介護職員・・利用者15名までは1名、それ以上は利用者を5名増やす都度1名増
機能訓練指導員・・1名以上
(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師いずれかの資格保有者)
管理者・・・医師1名
理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)のいずれか1名
その他・・・利用者10名に対してスタッフ1名
(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師・介護職員いずれか)