在宅で介護サービスを利用したり、老人ホームに入所したりするときに、必ずといっていいほど関わってくるのがケアマネージャーです。そのため、一般的には「ケアマネージャーに任せておけば介護事業所(以下、事業所)選びは大丈夫だ!」と思われている方がたくさんいます。
はたして、事業所を選ぶときは、ケアマネージャーに任せておくだけで、本当に大丈夫なのでしょうか?
確かに、あなたが適切な方法でケアマネージャーを選んだのであれば、事業所選びも上手くいく可能性が高いです。
しかし実際には、多くの方がケアマネージャー選びを適切に行えていません。
私の経験上、問題なく適切にケアマネージャーを選べている人は、以下の2パターンに当てはまる人のみです。
・あなた自身が5年以上ケアマネージャーの仕事をした経験がある。
・あなたの家族や親友が5年以上ケアマネージャーの仕事をした経験がある。
また、「在宅ケアマネージャーの選び方」を学んだことがある人は、適切なケアマネージャーを選べている可能性が高いです。
中には、「選んだケアマネージャーがたまたま良かった」というような運の強い人もいます。
とはいうものの、上記の要件に当てはまる人はそう多くはありません。そのため、ほとんどの人が適切にケアマネージャーを選べていないのが現状です。そしてその結果、事業所選びが上手くいかない可能性は高くなります。
それでは、ケアマネージャー選びに失敗した場合には、どうすれば適切な事業所を選択することができるようになるのでしょうか?
今回は「介護事業所(ケアマネージャーも含む)を選ぶ際の基本的な考え方」について解説します。
ケアマネージャーの提案だけでは上手くいかない
介護に関する相談をする際に、「初めて介護保険の申請をする方」、また「在宅の介護に限界を感じて、これから老人ホームを探す方」など、その人の置かれた状況によって相談すべきところが異なります。
また、当然ながら相談者自身の知識量や人脈の幅も一人一人違います。
そのため、「施設のケアマネージャーに相談をすれば、自分の悩みが解決するだろう」と考える人もいれば、「何もわからないからとりあえず役所に相談してみよう」と判断する人もいます。
このように、相談者の知識や人脈などによって、介護に関する相談先(ケアマネージャーや役所など)は変わります。
ただ、どのような場合であっても、相談をする前に必ず意識してほしいことがあります。それは、「誰に相談をするにしても、相談先からのアドバイスに依存をしない」ということです。
依存をしないというのは、どういうことを意味するのでしょうか? それは、「相談先のアドバイスも提案の一つであり、それがベストではない可能性もある」と考えることです。
そうは言っても、「最初から相談先のアドバイスを疑ってかかってください」と言っているわけではありません。まずは、「そのアドバイスが本当に適切なのか」ということを、ご自身でもきちんと調べてみることが大切なのです。
例えば、依存をしている人は「ケアマネージャーが紹介してくれた介護事業所だから大丈夫でしょう」と勝手に決めつけて、自分できちんと調べようとはしません。こうした人は、相談先のアドバイスに依存している人だといえます。
これでは自分で判断しているとは言えず、相談先に決めてもらっている状況になります。
このように、相談者のアドバイスに依存すると、事業所選びの選択肢を大きく狭めていくことになります。その結果、適切な事業所を選ぶことができず、後から後悔することになる可能性があることを知っておいてください。
五感を研ぎ澄ませながら確認する
例えば老人ホーム選びであれば、「実際に見学に行って施設の方と話をしながら雰囲気を確かめる」という方法は、適切な事業所を選ぶために有効です。
また、知り合いからケアマネージャーを紹介されたのであれば、比較する意味で「別のケアマネージャーにも同じ内容の相談をしてみる」ことも良い手段だといえます。
中には、「知り合いに紹介してもらったのに、失礼にあたるのでは?」と心配される方もおられるでしょう。しかし、あなたの希望に合った介護事業所を見つけたいのであれば、そのようなことを気にする必要はありません。
どうしても「そんな失礼なことはできない……」と思われる方は、初めから知り合いには紹介してもらわないことをお勧めします。
もしくは、希望に合わない事業所でも、利用し続けるリスクがあることを頭の片隅に入れながらお願いするとよいでしょう。
とはいうものの、「父親がお風呂場で倒れて、突然介護が必要になる」ということもあります。そういった状況では、必要な情報を集めたり事業所を比較する時間が取れなかったりすることもあるでしょう。すると、希望に合う事業所を探すのが難しくなります。
こうしたことから、希望に合わない事業所を選んでしまうことを心配される方はたくさんいます。
しかし、そうした場合でも、過剰に心配する必要はありません。
なぜなら、デイサービスや老人ホーム、更にはケアマネージャーも途中で自由に変えることができるからです。
多くの人は、身内の方が倒れてすぐは、落ち着いて事業所選びができません。しかし、その後に身内の方が介護サービスを使っている間は、時間と気持ちに余裕が生まれます。ですから、その時にしっかりと探し直せばよいのです。
利用者ご本人の状況を誰よりも知っているのは、かかりつけのお医者さんでも担当のケアマネージャーでもなく、あなた自身です。
そのため、利用者本人に一番合った事業所を探せるのは、あなた自身なのです。
確かに、事業所を探していく上ではケアマネージャーや役所からの情報も必要になります。ただ、そうしたことに依存せず、その情報などを基に「あなた自身で事業所の良し悪しをきちんと確認した上で判断する」という考え方が大切です。
そうすることで、あなたの家族にあった事業所を選ぶことができるようになります。