要介護認定調査を受ける時に知っておきたい知識

要介護認定の申請書を市区町村に提出すると、1週間以内に連絡が入り「認定調査」を受けることになります。この認定調査は、市区町村から派遣された訪問認定調査員(以下、調査員とする)が自宅(あるいは入院・入所先)に訪問して行われるものです。

調査員は、介護を必要としている人(以下、対象者とする)や家族などの介護者から、心身状態や生活状況などについて聞き取り調査を行います。

ただ、認定調査項目は74項目もある上に調査員の滞在時間は20分~40分程度です。その限られた時間の中で、的確に対象者の状態を伝えることが出来るでしょうか。

ましてや、初めて認定調査を受ける方は「どんなことを訊かれるのだろうか?」「何か準備しておく物はないのか?」など、大きな不安を持っていることは間違いありません。

さらに、この認定調査は要介護認定審査に反映するものです。そのため、対象者が普段生活している状況をそのまま見せることが大切なのです。しかし、「調査の内容」や「どのような質問をされるのか?」ということもわからないのでは、日頃の様子を的確に伝えることは困難だといえます。

また、対象者の中には、世間体を気にされ「いつも一人では行えずに介助してもらっていること」であっても、調査のときは「一人でやっています」と答えてしまいがちです。そうなると、的確な判断が出なくなります。

そうしたことを避けるためにも、事前に要介護認定調査項目や、調査に必要な準備について知っておくことが大切です。

そこで今回は、「要介護認定調査項目と調査事前準備」について説明します。

要介護認定調査の流れ

まず、認定調査が行われる日時は事前に市区町村より電話で連絡が入り、対象者と立ち会う家族の都合なども考慮されて決められます。認定調査は平日に行われることが多いですが、家族は仕事を休んででも調査に立ち会うことが大切です

認定調査において、対象者だけでは日頃の状態を的確に伝えることができない場合があります。そして、きちんと普段の介護状態を伝えることができないと、正確な要介護度が判定に出ない可能性もあるのです。

認定調査が行われる場所は、対象者の自宅が基本になります。しかし、対象者の状態によっては、入院している病院や入居している施設で行うことも可能です。ただ、病院などで調査を行う場合は、プライバシーの関係もあり病院側へ「認定調査があること」を伝えなければいけません。その後、日時などを相談しながら決めることが基本となります。

さらに認定調査は、日頃の状態とあまりにも違う場所で受けるのではなく、できるだけ日ごろから生活している環境を選んで調査を行うようにすることが大切です。

例えば、普段は寝室で過ごす時間が多い方を、無理に居間へ移動して調査を受けるのではなく、いつも生活の場としている寝室での状態を中心に見てもらう方が、より日頃の様子を分かってもらえます。

認定調査の当日

訪問認定調査員(以下、調査員とする)が訪問先に到着すると、まずは対象者へ身分証を提示し、今回の調査目的について説明があります。その後、調査票に基づいて、質問や実際に対象者に動いてもらいながら調査が進められていくという流れです。

認定調査には、対象者と介護者である家族はもちろん、担当のケアマネジャー(ケアマネ:介護支援専門員)も同席することができます。また、質問は対象者に対して行われることが基本ですが、家族が補足して対象者の状態を伝えることも可能です。

しかし、対象者によっては自分のできないことを他人(家族)に言われることで気分を害することもあるので、注意が必要になります。そのような場合には、後から調査員に時間をとってもらったり、メモに情報を残して手渡したりするなどの方法も大切です。

このように認定調査では、決められた調査の流れもありますが、対象者の状況に応じて臨機応変に対応できる部分もあります。もし、対象者とは別に時間が必要な時などは、認定調査の日時を決める際に調査員へそのことも伝えておくと、対応してくれやすいです。

認定調査項目

認定調査票は、「概況調査」「基本調査」「特記事項」の3種類の調査票から構成されています。認定調査員(以下、調査員とする)は、国で定められている全国共通の調査票に基づいて調査を行うのです。

認定調査票① 概況調査

概況調査は、「調査実施者(記入者)」「調査対象者」「現在受けているサービスの状況」「置かれている環境」の5項目で構成されています。

具体的には、対象者の「氏名」や「生年月日」「年齢」を対象者に尋ねて、本人がきちんと理解できているかを同時に確認する質問です。また、認定調査と合わせて「利用している介護保険サービスの内容」や「おおよその回数」を聞かれます。さらに、家族構成や介護に関わることができる家族の住居場所、対象者の住居環境も調査対象です。

概況調査では、特に「住居環境などで介護が必要になっている部分」などを調査員に伝えることが大切になります。

例えば、「外出するときに玄関前の階段があることで困難になってきている」などです。その他にも、日常的に使用している機械・機器(呼吸機器など)がある場合は必ず伝えて下さい。

以下に、概況調査の項目をまとめます。
調査票(概況調査)

認定調査票② 基本調査

基本調査は、大きく「身体機能・起居動作」「生活機能」「認知機能」「精神・行動障害」「社会参加への適応」「その他(医療などについて)」の6つに分けられています。

第1群「身体機能・起居動作」

第1群は、対象者の麻痺(マヒ)や拘縮(関節や筋肉が固まること)、寝返りというような「基本的な体の動き」や「起きたり座ったりという能力」を把握するための13項目による構成です。例えば、対象者に「麻痺があるのかないのか?」「麻痺の場所が右手なのか左足なのか?」など細かく確認されます。さらに、「立ち上がりや起き上がり」「歩行」は、対象者に危険のない程度で実際に行ってもらうのが原則です。

第2群「生活機能」

第2群は、生活を続けていく上で必要な機能を調査するための12項目になります。具体的には、「食事」や「トイレ」「歯磨き」「洗顔」「着替え」にどのような介護が必要なのかを聞かれ、その上で外出の頻度(回数)など細かい内容も項目に含まれているのです。

第3群「認知機能」

第3群は、認知機能の程度を調整するために「今日の日付」や「自分の名前」「今いる場所がどこか」「家の位置を理解できているか」などの9項目が質問されます。

第4群「精神・行動障害」

さらに、第4群では、認知症などによる行動障害があるかないか、また行動障害の程度を15項目の質問から確認されるのです。この行動障害とは、認知症の人に多くみられる「介護する上で障害となりやすい行動のこと」をさします。

例えば、「ものを盗られたなどと被害的になること(もの盗られ妄想)」や「昼間寝てしまい、夜が眠れず動き回ること(昼夜逆転)」「ひどいもの忘れ」「介護に抵抗すること」などの有無が質問項目になっているのです。

第5群「社会生活への適応」

第5群は、地域での社会生活を続けるために必要な能力や介助の状況を調べる項目です。具体的には、「内服薬」「金銭管理」「集団生活への不適応」「買い物」「調理」などの6項目で構成されています。

第6群「その他(医療などについて)」

最後の「その他」は、12項目の質問から「過去14日間にうけた特別な医療について」確認される欄です。
具体的には、「点滴をしたか」「透析をしているか」などの医療的な内容になります。この項目に対しては、退院直後や持病のある人は「どのような治療をしているのか?」をかかりつけ医に聞き、把握しておくとスムーズに答えることができるはずです。

調査員には具体的に伝える

上記の内容を参考に、質問項目に対しての答えを調査前に確認しておくと、調査当日に焦ることなく対応できます。また、質問に対する答えは「できる」「できない」だけでなく、「どこの部分をどのように介助しているのか?」を伝えることが重要です。

例えば、「食事は少し手伝えば、自分で食べることができます」では、どのような介助をどの程度おこなっているのかがわかりません。そのため「お箸を持つように声をかければ、自分で食べることができます」「スプーンにおかずやご飯をのせるところを手伝えば、自分で口元まで持っていき食べることができます」などのように、具体的に伝えることが大切です。

また、日によって対象者の状態も変化します。そのため「調査員が来た日はできたことも、実は日頃はできないことの方が多い」という項目もあるかもしれません。そのような場合は、「普段介助することが多いのか?」ということを1日や1週間の生活から振り返り、頻度の多い方を選択して答えるとよいです。

ただし、頻度を伝える時には「ときどき」「たまに」という曖昧な表現ではなく、「週に何回」などのように具体的な表現を使うことをおすすめします。

このように、基本調査においては実際に対象者が「どのような生活状況にいるのか?」「どのような介助を受けているのか?」ということについて詳しく調査されます。

以下に、基本調査の項目をまとめます。
基本調査

認定調査票③ 特記事項

特記事項とは、基本調査の中で「項目の選択だけでは表現しにくい部分」を記入することができるように設けられているものです。そのため、調査員も内容をより具体的に記入する必要があります。

しかし、この特記事項に関しては対象者に1つ1つ質問しながら行われるものでなく、基本調査を行いながら調査員が判断に迷ったときや特記事項として情報が必要だと判断した内容を記入するものなのです。

だからこそ、基本調査の内容には「介助の方法」や「介助している頻度」を具体的に伝える必要があります。

このように、実際に調査員が行う調査項目は74項目にもなります。この全てに答えていくことだけでも大変な中、的確な情報を頭で整理しながら調査員に伝えることは、対象者だけでは困難です。そのため、調査前の事前準備や一緒に立ち会う家族の力が必要になります。

調査項目に沿った事前準備

ここまで述べたように、認定調査では心身の状態や生活状況まで幅広い項目があり、次々に質問が進んでいきます。

ただ逆にみれば、決められた項目での調査でしかないですし、全国どこでも同じ様式が使われているのです。

そこで、的確に調査を受けるために「調査前に各項目の内容を読み込み、特に対象者にとって重要な項目では答えをあらかじめ考えておくこと」が、的確な認定を受けるための一番の対策になります。

また認定調査では、対象者の病気の状態ではなく、その病気によって発生している「介護の手間」を中心にみられるのです。つまり、実際に家族が「どのような介護をしているのか?」「どの程度(回数や頻度)介護をしているのか?」を伝えることが大切になります。

しかし、伝えるべきことがわかっていても、調査員に質問された時に的確に答えることは困難である場合がほとんどです。そのため、調査の前から介護の状態などをメモに残しておくことをおすすめします。

そして、認知症の人の介護では、「徘徊(歩き回る行為)」「異食(食べれないものを口に入れてしまう行為)」「もの盗られ妄想」というような行動障害がみられる場合があります。そして認知症の人に対する調査では、その内容が特に重要になるのです。

例えば、メモの内容も「異食があった」だけでなく「1/15 13時頃 ティッシュを口に入れて噛んでいた」のように具体的に残しておきます。このように、細かくメモに残しておくことで、「どれくらいの頻度で行動障害がみられているのか?」「どのような問題があるのか?」が伝えやすくなるはずです。

ただ家族も、仕事や介護の合間に「長い期間をかけて記録を続けること」は難しいと思いますので、認定調査前の1週間だけでも取り組んでみて下さい。

このように、認定調査を受ける時に、流れや調査項目を知っているのと、知らないとでは、調査前の行動から変わってきます。さらに、認定調査でも対象者の状態や介護の状況を的確に伝えることができるはずです。

ぜひ今回の「要介護認定調査項目と事前準備」を参考にして、家族で認定調査に向けて話し合ってみて下さい。

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