家族でもできる介護認定の申請方法と認定の流れ

両親の介護が必要になった時は、誰もが初めてのことに戸惑い、何から行動するべきかわからない状態になります。また、多くの人は「介護保険」という言葉は知っていても、「介護保険を利用するために必要な手続きの方法」を知らないのではないでしょうか。

当然ながら、家でじっと待っていても介護サービスは受けることができません。介護保険はあくまでも自己申請が基本なのです。

だからこそ、事前に「介護保険を利用する方法」や「利用するための手続きの内容」を知っておくことが大切になります。

例えば、介護保険を利用する時に入り口となる「要介護(要支援)認定」の手続きもその一つです。介護サービスを利用するためには、要介護(要支援)認定を受けて介護が必要な状態であることを認めてもらわなければいけません。

そこで今回は、「家族でもできる介護認定の申請方法と認定手順」について説明します。

要介護(要支援)認定申請ができる人の条件

介護保険は、誰もがサービスを利用できる制度ではありません。介護保険を利用できる人は決まっているのです。そのため、まずは介護が必要な方が「要介護認定を申請できる対象者なのか?」ということを確認する必要があります。

介護保険を利用できる人は、「第1号被保険者」と「第2号被保険者」と呼ばれる人たちです。

具体的にいうと、第1号被保険者とは「65歳以上の方」を指し、第2号被保険者とは「40歳から64歳までの方」をいいます。

第1号被保険者は、介護が必要になった原因を問わず、日常生活を送るために介護や支援が必要になった人であれば、誰でも要介護(要支援)認定を申請することができます。その一方で第2号被保険者は、「特定疾病(とくていしっぺい)」の中に含まれる病気を患っていなければ要介護(要支援)認定を申請することができないのです。

ここでいう特定疾病とは、介護保険法の中で定められている16種類の病気や障害を指しています。具体的には、「末期のがん」「関節リウマチ」「筋委縮性側索硬化症」「初老期の認知症」などがあり、これらは3~6か月以上継続して、要介護状態または要支援状態となる割合が高いと考えられている病気です。

以下に特定疾病を一覧にしてまとめます。
・がん末期(医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る)
・筋委縮性側索硬化症
・後縦靭帯骨化症
・骨折を伴う骨粗しょう症
・多系統萎縮症
・初老期における認知症(アルツハイマー病、脳血管性認知症等)
・脊髄小脳変性症
・脊柱管狭窄症
・早老症(ウェルナー症候群等)
・糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
・脳血管疾患(脳出血、脳梗塞等)
・進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病
・閉塞性動脈硬化症
・関節リウマチ
・慢性閉塞性肺疾患(肺気腫、慢性気管支炎等)
・両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症

このように、介護保険のサービスを使うためには、年齢によっては「介護が必要となった原因(病気)が特定疾病であるか?」という条件を満たさなければなりません。要介護認定の申請をする前に、まずは介護の必要な方が「年齢や病気の条件を満たしているのか?」を確かめることが大切です。

要介護(要支援)認定の申請方法

次に、要介護(要支援)認定の申請方法です。

この申請をすることで、要介護(要支援)認定を受けることができ「要介護区分」が決まります。その区分によって、「介護サービスをどの程度利用することができるのか?」ということが変わってきます。

要介護(要支援)認定の申請は、本人(介護を必要としている方)の住民票がある市区町村の役所で行わなければいけません。地域によって名称は違いますが、役所の「介護保険課窓口」に必要書類を持って申請に行きます。

また申請は、「本人」または「本人の家族」が手続きするのが基本です。しかし、本人や家族が役所まで行くことができない場合は、地域にある「地域包括支援センターのケアマネジャー」や「居宅介護支援事業所」に代行をお願いすることができます。

この申請の代行は、被保険者本人が了承した代理者であれば誰でも行うことが可能です。ただ、申請の代行に関する決まりは自治体によって違いがあります。

例えば、「委任状が求められること」があったり「代行できる人が限られていること」があったりする自治体も存在するのです。そのため、本人がお住まいの自治体のホームページなどで、事前に確認をしておくと安心して行うことができます。

以下に、要介護(要支援)認定の申請を代行できる主な者をまとめます。
・本人の家族
・成年後見人
・民生委員
・地域包括支援センター
・居宅介護支援事業所
・地域密着型介護老人福祉施設
・その他、被保険者本人が了承した代理者

このように申請の手続きだけであれば、本人に代わって自治体の窓口で誰でも行うことができるのです。しかし、申請する際には本人の被保険者証や申請に必要な情報を持参しなければいけません。

具体的には、「主治医の名前」や「主治医の連絡先」「最後に受診した日」「認定調査の訪問先」などの情報が必要になります。

また、申請には必ず「主治医」が必要です。この主治医は、本人が普段からよく受診している「かかりつけ医」にお願いすることをおすすめします。なぜなら、本人の状態がわかっていないと的確な意見書を書くことができず、正確な認定を受けることができないからです。

さらに、最低でも介護認定の申請をする2か月以内に主治医の病院に受診をしておく必要があります。もし、介護が必要になった原因の病気などがある場合は、その病気を受け持っている医師にお願いすると、正確な状態が「主治医意見書」に反映されやすいです。このような点からも、主治医には事前に介護認定を受けることを相談しておくと、申請がよりスムーズに進みます。

こうした認定に必要な情報は、窓口で「要介護(要支援)認定申請書」に記入しなければならない内容です。この申請書は、自治体のホームページなどでダウンロードすることも可能なので、事前に本人に記入してもらい持参することもできます。

しかし、この申請書は自治体によって書式が違うため「必ずお住まいの自治体のホームページで確認する」か「直接窓口で受け取り記入する」ことが大切です。

さらに窓口での手続きには、要介護(要支援)認定申請書と合わせて、被保険者証を持っていかなければいけません。ここでいう「被保険者証」とは、65歳以上の場合は「介護被保険者証」、40歳~64歳までの方は「健康保険者証」を指します。

上記を参考にした上で、申請に必要な書類と情報をそろえて、役所の窓口に行き手続きをすると、要介護(要支援)認定がスムーズに行えるはずです。

このように、一見難しそうに思える手続きですが、きちんと必要な情報や書類を知ることで家族でも行うことができます。また、申請についてわからないことは、自治体や地域にある地域包括支援センターの相談窓口を活用することで大抵のことは解決できるはずです。

要介護(要支援)認定を受けるまでの流れ

要介護(要支援)認定の申請をした後は、役所から認定調査員が訪問し、本人(介護が必要な人)の実際の状態を調査していきます。そのためには、まず自宅に訪問する日取りを調整しなければいけません。

申請書を提出した後に、役所から電話での連絡が入り「調査員の訪問日」を決めます。この認定調査の日程は、本人はもちろんのこと、家族の同席も考えて調整することが大切です。なぜなら、本人だけでは正確な日頃の状態を伝えることができず、適切な介護判定がでないことがあるからです。

人間誰しも、他人には自分の弱い部分を見せたくないものです。そして、高齢の方はよりその思いが強く出る傾向があります。

しかし、認定調査においては、必要な介護を受けるために「日頃の状態を正確に伝えること」が大切になるのです。そのため、調査員に「本人が一人ではできないこと」もきちんと伝える必要があります。こうしたことからも、認定調査には家族の立ち合いが必要になってくるのです。

実際には、調査員が自宅に訪問して「本人の身体の状態を確認」したり、「決められた項目に沿って日常生活についての質問」をしたりすることで調査がすすめられていきます。この質問は、74項目で時間にすると30~40分程度で終わるような内容です。

もし本人が入院している場合でも認定調査を受けることは可能ですが、その場合は、病院の主治医やソーシャルワーカーに相談してから行う必要があります。

そして、調査員が訪問した後は役所から、介護度の認定が出るのを待つばかりです。役所では、認定調査で得た情報をコンピューターにかけて、一次判定を出します。その一次判定の結果と主治医の意見書、調査の際の特記事項をもとに、認定審査会が開かれ、要介護度が決定されるのです。

さらに、決定された介護度は「介護被保険者証」として自宅へ郵送され、本人の手元に届きます。

以下に、要介護認定の申請から保険者証通知までの流れをまとめます。

審査

このように、要介護(要支援)認定の申請をしてから保険者証が手元に届くまでに多くの過程が必要なのです。つまり、その過程をこなすためには時間も多くかかります。

具体的には、役所の窓口に申請書を出してから、要介護度がわかるまでに30~60日程度かかる可能性があります。

つまり、介護が必要になった時に「すぐに役所での介護認定の手続きをすること」が大切になってきます。ただそうはいっても、家族は両親のかかりつけ医や保険者証の置き場所などは知らないことがほとんどです。

だからこそ、普段の会話の中でも両親から病院の情報を聞き、前もって準備しておくことが必要になります。ぜひ「家族でもできる介護認定の申請方法と認定手順」を参考にされて、必要な情報などを準備しておきましょう。

以下に、介護が必要になる前から「要介護(要支援)認定申請」のために知っておくと役に立つ情報をまとめています。参考にして、メモ程度でもよいので残しておくことをおすすめします。

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