よいグループホームを探すために家族が必要な知識とは?

グループホーム65歳以上の4人に1人が認知症患者であり、その数は450万人を超えていると言われています。そこで今、「認知症の最後の砦」と注目されているのが、認知症に特化した施設「グループホーム(認知症対応型共同生活介護)」です。

グループホームは全国に13000件以上あり、認知症患者の増加に伴ってグループホームも増設を続けています。数多くのグループホームがあるため、施設を探す家族は、しっかり見極めて「よいグループホームを選びたい」と思われているのではないでしょうか。

しかし、「施設を探す条件」や「施設に求めるもの」「望む生活」が人によって違うため、「良い」と感じる施設もその人によって違います。つまり、「よいグループホーム」とは、「認知症の親(または配偶者)と相性の良い施設」「本人や家族が望む条件に合う施設」ということになるのです。

ただ、「親・配偶者に合った施設をどのように探せばよいのか?」と悩まれる家族も多いのではないでしょうか?

そこで今回は、「グループホームを選ぶ時に4つのやるべきこと」についてお伝えします。

基礎的な知識を持つ

グループホームを選ぶ時にやるべきことの1つ目は、グループホームについて基本知識を持つことです。

グループホーム(認知症対応型共同生活介護)とは

グループホームの正式名称は「認知症対応型共同生活介護」といい、認知症を患った人に特化した施設になります。

グループホームの特徴は、1ユニットに6~9名という少人数の入居者が「調理」「掃除」「洗濯」などの家事を、スタッフと一緒に行いながら共同生活を営む場となっていることです。もちろん、入居者の状態に合わせて「入浴」「排泄」「食事」という身体介護もサービスに含まれています。また、グループホームは、少人数のアットホームな環境の中で顔なじみのスタッフにケアしてもらえることが大きな利点です。

たとえば、認知症の人にとって「介助を受けるスタッフ」や「一緒に生活を営む人」との馴染みの関係が混乱を防ぎ、その馴染みの環境での安心感が認知症状の進行を予防することにもつながる場合があります。さらに、共同生活の中で「その方のペースに合わせて家事などの役割を担う」ということが「認知症状の改善につながる」と言われていることから、グループホームは認知症の最期の砦ともいわれているのです。

また、グループホームは介護保険サービスの中でも、「地域密着型サービス(地域密着型介護予防サービス)」に位置づけられています。この地域密着型サービスは、認知症高齢者や中重度の要介護高齢者等が、「できる限り住み慣れた地域での生活を継続できること」を目的としたサービスです。そのため、運営基準なども地域の現状に合わせつつ地域の特性を生かして市区町村がある程度決めることができます。

入居条件とは

ただ、グループホームは「認知症に特化していること」「地域密着型サービスであること」によって、入居できる人の条件が決まっています。そのため、「親(または配偶者)が条件を満たしているのか?」という確認が大切です。

グループホームに入居するためには、「グループホームが所在する地区町村に住民票があること」「医師による認知症の診断を受けていること」「要支援2~要介護5の要介護者であること」という3つの条件を満たす必要があります。

例えば、親や配偶者が「認知症のような気がする」というだけでは、入居することができないのです。認知症の診断は、精神科やもの忘れ外来だけではなく、普段から「かかりつけ」にしている内科でも可能ですので、必ず医師に診断してもらう必要があります。実際に、施設から入居前に「認知症診断書」の提出を求められる場合が多いです。

このように、グループホームに入居するためには条件があるため、施設を探す時は「親(または配偶者)が条件を満たしているのか?」といことを注意して確認する必要があります。

施設の特色や違いを知る

グループホームを選ぶ時にやるべきことの2つ目は、施設の特色や違いを知ることです。

グループホームを運営しているのは、主に「社会福祉法人」や「医療法人」「NPO法人」「営利法人」などがあります。また、グループホームの数は年々増加しているため、施設よって特色を出して運営している所が多いです。つまり、他施設との差別化を図っている施設が増えてきているのです。

例えば、建物の構造では「木造」や「鉄筋コンクリート」という違いがあったり、建物の雰囲気では「古民家」や「施設風」という違いがあったりしますし、「平屋」と「2階建」という違いもあります。

さらに、居室や共同スペースとなるリビング、トイレなどもグループホームによって広さが違うのです。

居室は基本「個室」となっており、広さは「床面積7.43㎡(約4.5帖)以上」と決まっていますが、実際は「9㎡~16㎡」というようにグループホームによって差が見られています。また、各個室にトイレがついていたり、収納スペース(クロゼットなど)がついていたりと、他のグループホームと差別化を図っている場合があるのです。

そして建物の造りだけでなく、「ほかの施設と隣接している施設」や「医療との連携が強い」「浴槽にリフトがついている」などの特色の有無も知っておく必要があります。

例えば、在宅で親(または配偶者)が、車イス生活の状態であれば「浴槽にリフトがついているかどうか?」は重要なポイントです。なぜなら、グループホームは小規模な施設のため、家庭にあるようなユニットバスを設置している場合が多いからです。ユニットバスでは、立ち上がることが難しい方に浴槽へ入ってもらうには負担が大きいため、シャワー浴のみの対応になることもあります。

また、グループホームの人員基準には看護師の配置が義務づけられていないため、医療的なケアができないという施設が多いのが現状です。

ただ、グループホームによっては「法人内の医療機関との連携が密に行われている」「近所の訪問診療との連携がうまく図れている」「非常勤での看護師を配置している」という施設もありますので、確認しておくことが大切になります。

例えば、病院ではなく施設での看取りを考えている場合や、医療が必要になった時のことを考えると「医療と連携を図ることができているか?」ということは重要です。特に、グループホームで長く過ごすためには、医療と連携の有無は必ず確認しておくべきことになります。

このように、同じグループホームであっても、施設によって差別化を図るために様々な特色を出しているのです。ただ単に、グループホームの所在地を知るだけではなく、「お住まいの市区町村にどのような特色を持ったグループホームがあるのか?」を把握して、比較することが大切になります。

要介護者や家族の希望をまとめる

グループホームを選ぶ時にやるべきことの3つ目は、施設を探す上での「条件」や「生活に対する希望」などを、要介護者である親(または配偶者)と家族でよく話し合い、まとめることです。

では、どのような内容を話し合えばよいのでしょうか。そこで、施設探しの際に決めておくべき4つのポイントをまとめました。

立地

1つ目のポイントは、施設の場所です。家族介護は、親(または配偶者)が施設に入居したら終わりというわけではありません。たとえ、施設に入居したとしても「病院の受診」や「外出」「金銭管理」「衣服の衣替え」など、家族が関わらなければならないことがあります。なによりも、精神的な面での支援は家族にしかできない場合が多いのです。

例えば、入居直後は環境の変化によって、親(または配偶者)も不安が大きくなります。しかし、グループホームのスタッフとの人間関係もできておらず、対応に困る場合が多くあるため、家族の力が必要になるのです。グループホームによっては、スタッフと馴染みの関係が築けるまで、家族にこまめに面会に来ていただけるように協力を仰ぐ場合もあります。そのため、家族にとって「グループホームが通いやすい場所にあるか?」ということが大切になるのです。

また、グループホームの立地場所は街中や住宅街、郊外などさまざまであるため、立地によっては「散歩にでやすい」「買い物に行きやすい」というように、日頃の過ごし方にも違いが見られる場合があります。

利用料

2つ目のポイントは、利用料などの金銭面です。施設に入居するということは、家をもう一つ借りて住むようなものですし、高齢者の多くは年金で生計を立てています。そのため、施設に入る際にかかるお金や、月々の利用料はとても重要になるのです。

グループホームでの利用料は、「家賃」「水道光熱費」「食費」「介護サービス費」という項目が基本になります。ただ、その他に個人差はありますが「医療費(お薬代)」「おむつ代」「散髪代」「日用品代」などがかかると予想しておくことが必要です。

具体的には、「家賃」「水道光熱費」「食費」「介護サービス費(1割負担)」を合わせて、一月に9~23万円程度かかります。このように、差が大きく出る理由は介護サービス費以外の家賃と水道光熱費、食費については各施設の取り決めに任せてあるからなのです。そのため、「都心部に近い」「交通の便が良い」というような好条件の立地に建つ施設は、他の施設と比べて家賃が高くなってしまいます。

このように、同じグループホームであっても施設によっては金額に差があるため、施設を選ぶ時には毎月の予算を決めておくことが重要です。たとえ便利の良い場所にある施設に入居できたとしても、経済的に負担が大きくなっては、長く住み続けることが難しくなる場合もあります。

親・配偶者の好み

3つ目のポイントは、親(または配偶者)の好みです。

上記でもお伝えしたように、施設によっては建物や室内の装飾品によって雰囲気に違いがあります。また、居室の広さにも違いがあるため「自宅から持っていく家財道具の大きさ」や「親(または配偶者)が安心して過ごせる空間として必要な物」が十分におけるスペースの確保も必要です。

しかし、グループホームを探す段階では、親(または配偶者)の認知症状の進行に伴って、本人の気持ちや思いを言葉で確認するのは難しい場合がほとんどになります。

ただ、本人の言葉として気持ちを聞くことはできないかもしれませんが、長年共に過ごした家族だからこそ「親(または配偶者)の好む雰囲気」もよく知っているはずです。「お母さんに合いそうな雰囲気だな~」「お母さんと似たような雰囲気の入居者さんがいるな~」というように、家族が親(または配偶者)の好みそうな施設を選ぶことも一つの方法になります。

また、食事も大切な好みの一つです。グループホームは、食事の準備を入居者とスタッフで一緒に作ることで認知症状の進行を予防するように取り組んでいます。ただ、他の事業所と隣接している施設などでは、管理栄養士の考えた献立をもとに専門のスタッフが調理を行い、盛り付けや配膳などを入居者にしていただくようにしている場合もあるようです。

さらに、食事面では「減塩食」や「ミキサー食」というような「特別食での対応が可能なのか?」も施設を決めるうえでは確認が必要になります。

最期の過ごし方

4つ目のポイントは、最期の過ごし方です。グループホームでは「住み慣れた場所での看取り」に取り組んでいる施設が多くあります。ご自宅では看取りを行うことがなかなか難しいのが現状ですが、グループホームでは家族と共に住み慣れた場所で最期まで過ごすことができる施設もあるのです。

ただ、看取りを行うとしても「経験の長いスタッフ」や「連携を密にしている訪問診療医」「家族の協力」が必要になります。また、看取りを行うということは、施設側にもリスクが伴うために積極的に行っていないグループホームもあるのが現状です。そのため、入居の時には「親(または配偶者)の最期を過ごす場所をどこにするのか?」ということも考えておくことが必要になります。
このように、4つのポイントから「親(または配偶者)や家族の希望」を確認しておくことで、グループホームを選択するときにも選びやすくなるはずです。

以下に、事前に決めておくべき条件をまとめます。

家族で決めておくべき条件

立地条件 住民票のある市区町村 (                      )
希望の地域  (                          )

例)○○駅の近く、家族が車を持っていないため交通の便利がよいところなど

利用料 毎月の利用料・・・・・・・

おむつ代などの日用品費・・

合計予算金額・・・・・・・

医療面 例)看取りができる、看護師がいる、近所に連携している病院がある  など

 

 

 

その他 例)落ち着いた雰囲気の建物がいい、本人と話の合いそうな入居者がいる、食事にこだわっている所、男性入居者がいる、スタッフの明るいところ など

 

 

 

 

施設見学

グループホームを選ぶ時にやるべきことの4つ目は、施設見学です。

グループホームの情報はインターネットで調べることが可能です。ただ、「一見は百聞に如かず」というように、実際にグループホームに行って自分の目で確かめるのが一番よい方法といえます。

そして、見学に行く場合は、最低でも3件以上のグループホームを見学して比較することをおすすめします。

なぜなら、1,2か所では比較しにくく、「良い」「悪い」という2択でしか見比べることができないからです。3か所以上のグループホームを見学することによって、施設ごとの違いや特色も見えてきやすくなります。また、見学の時にどのような点を、注意して見ればよいのかも分かってくるはずです。

さらに、建物の雰囲気と同じように「すでに入居されている方の雰囲気」や「スタッフの雰囲気」は実際に行って感じることでしか知ることができまん。こうしたことからも、家族が施設見学に行きしっかり見ることが重要なのです。

質問をすることが大切

ただ、そうはいってもグループホーム内を見るだけでは、わからないことも多くあります。そこで、事前に質問することを考えておくことが必要です。

例えば、「入居者の平均要介護度」や「入居者の男女比」「退去しなければいけない条件」を尋ねることで、そのグループホームの状況が見えてきます。

なぜなら、グループホームに入居できる対象者は要支援2以上になっていますが、平均的にみると要介護3程度のグループホームが多いです。もし、平均介護度が要介護4程度であれば、半数の入居者が寝たきりに近い状態であることがわかります。

さらに、グループホームは入居者も介護スタッフも少人数なため、男性の入居者が断られる場合もあります。なぜなら、グループホームの夜間帯は女性介護スタッフが1人で対応することが多く、何か問題が生じた時に男性入居者に対処できない場合があります。そのため、運営する側としても受け入れに消極的になってしまうのが現状です。

そして、グループホームによっては、「2ヶ月以上の入院が必要になった場合」や「口からの食事がとれなくなった場合」というような退去条件を設けています。そのため、グループホームに入居しても「入居後に病気が悪化して入院したり」「認知症状の進行に伴って食事が食べられなくなったり」という状態になると退去しなければいけない場合もあるのです。

このように、グループホームへの見学には、事前に質問する内容を決めておくことで後から施設を比較しやすくなります。また、インターネットでは知ることができなかった情報も得ることができるのです。

たくさんあるグループホームの中から、親(または配偶者)に合った施設を探すことは簡単ではありません。しかし、グループホームの特徴を理解して「親(または配偶者)が安心できる生活」という視点から条件を見学前にまとめることで各施設を比較しやすくなります。

ぜひ今回の「グループホームを選ぶ時にやるべきこと」を参考にしてみて下さい。