1人暮らしになった親を見守るための3つの方法

たとえ元気であっても高齢になった親の一人暮らしは、離れて暮らす家族にとって心配事の一つです。だからといって、同居するには住居の問題や仕事、生活習慣の違いなどもあって難しい場合が多くあります。

また、同居できたとしても24時間一緒に過ごせるわけではないため、親が一人で過ごす間の安否を心配することに違いはないのです。

特に、持病がある親であれば、「急な体調の変化が起こった時に親が自分で対処できるのか?」という不安が残ります。

そこで今回は、「一人暮らしになった親を見守る3つの方法」についてご紹介します。

緊急通報システム

離れて暮らす家族にとって、親が「緊急事態の時に救急車を要請できるのか?」「誰かに連絡できるのか?」といった心配をされるケースは多いのではないでしょうか。親夫婦が揃っていれば、少しは安心できますが、一人暮らしとなると尚更不安になるはずです。

このような不安を取り除くために「緊急通報システム」というサービスがあります。この緊急通報システムは、ペンダント型の通報装置を本人に持って頂き、何かあった時にボタンを押すことで近所のボランティアや家族、駆けつけ隊員に連絡がいくような仕組みになっています。

市区町村の緊急通報システム

緊急通報システムを提供している機関としては、まず親が住んでいる市区町村があります。

利用料金は、市区町村によって多少の違いがあります。中には、親の所得金額によって通報機器のレンタル料金が安くなる場合もありますので直接問い合わせてみると良いでしょう。

しかし、市区町村の緊急通報システムを利用するには、緊急時に駆けつけてくれる家族や地域のボランティア(近所の友人や近隣の人)を確保する必要があります。そのため、「日頃から親が親しくしている友人などにお願いできるのか?」という問題があるのです。

例えば、近隣の方に緊急時に駆けつけることをお願いした場合、その方の電話番号を登録する必要があります。また、いつ緊急通報があるのかわからない状態が続くということは、駆けつける方にも精神的な負担がかかることになるため配慮が必要です。

民間の緊急通報システム

市区町村以外にも、民間の警備会社などが提供しているものがあります。ただ、市区町村のサービスと違って、民間の場合は全額自己負担となります。

例えば、警備会社のALSOK(アルソック)やセコムでは、高齢者向けのセキュリティーサポートサービスを提供しています。緊急通報システムの機器の設置だけでなく、「看護師による病状の相談」や「家族との連携」などのサービスを加えることもできるのが特徴です。

また、急変の場合は救急車の要請だけでなく、警備隊員が自宅に駆けつけ対応してくれます。さらに、自宅の鍵を事前に預けることができるので、「マンションに住んでいる方であっても早急に駆けつけ対応できる」「24時間いつでも対応してもらえる」というメリットがあります。

市区町村の緊急通報システムでは、自宅の鍵を近所の方に預けることに対して抵抗を持たれる方がいますが、防犯管理も行っている警備会社であれば、信頼して鍵を預けることもできるのではないでしょうか。

このように、提供している機関によって、「緊急通報システムの種類」や「料金」「その他のサービス」には違いがあります。そのため、利用時には、下調べをして比較しながら親の状況に合わせて必要なサービスを選択することが大切です。

見守りシステム

緊急通報システムは何かあった時のために備える対策になりますが、親が通報装置を押せない状況になった時には役目を果たせないものとなります。また、家族は日々の様子が見えないことに対して不安を持たれている方も多いのではないでしょうか。

そこで、一人暮らしになった親を見守り、異変を察知するための方法として「見守りシステム」というものがあります。このシステムの仕組みにはさまざまなものがあります。例えば、「電気ポット」や「照明器具」「ドアに設置したセンサー」「ガス」「水道」などの使用状況を家族の携帯やパソコンに情報として知らせるというものです。

毎日食事の時にお茶を煎れる習慣のある親であれば、電気ポットを必ず使うはずです。しかし、1日中電気ポットを使った記録がない場合には、「家の中で倒れているのではないか?」「なんらかの事故で家に帰っていないのではないか?」というように異変に気づくことができます。

同様に、各部屋にセンサー付きの照明器具を設置することで親の生活状況を知ることができますし、夜になっても照明が点いていなければ室内で倒れているかもしれないと考えることができるのです。

このように、日頃の親の生活状況を知っていることで、異変が起こった時に早期発見することが可能になります。

具体的な商品としては、象印の「i-potみまもりほっとライン」やIoT電球を利用した「つながるライト」、各電気会社などからの情報提供サービスがあります。

また、最近では親の自宅にカメラを設置して、一人になる時間帯の様子をいつでも確認できるようにしたり、カメラ機器と携帯端末で会話したりというようなこともできるようになってきました。

しかし、見守りシステムの機器はどれも親の生活状況に合わせて選択することが重要です。電気ポットを日頃から使わない親に対して、見守りシステムとして導入しても使う習慣がないため、せっかくの機能が意味のない状態になります。

そのため、まずは親の生活習慣をきちんと把握して、「どの見守りシステムを活用すればよいのか?」を家族で話し合うことが必要です。

このような見守りシステムは、緊急通報システムと比べて「家族が日ごろから親の安否を確認できる」という点にメリットがあります。親が普段通りに生活できていることを知れば、離れて暮らす家族にとっては、それだけでも安心感につながるはずです。

マンパワーを活用する

1人になった親を見守るためには、機器の設置だけではなくて「親の周りの人たちの力を借りること」も1つの方法といえます。

例えば、地域で活動する民生委員の役割の中には「一人暮らしの高齢者の把握」や「生活援助を必要としている方への相談」などが含まれています。そのため、家族が依頼しなくても一人暮らしになった親の様子を確認するために、定期的に訪問しているケースがあります。

ただ、人材不足で民生委員がいない地域もあるため、親の安否確認をお願いしたい場合は確認が必要です。

また、家族で親の生活を見直していくことで、すでに自然と親の存在を見守ってくれている人たちがいることに気づかされます。

例えば、「いつも買い物に行く商店」や「毎週受診しているかかりつけ医」「親の食事をお願いしている配食サービス」「新聞の配達や集金」「親が参加しているサークル活動」などで親と接する人たちです。日頃の親の様子はもちろんのこと、何か異変があった時にも最初に気づいてくれるのは、こういった日常生活の中で関わっている人達だといえます。

しかし、隣近所の親しい人であっても、いきなり「毎日、母(親)の安否確認をお願いします」というお願いをしても簡単に受けてもらえないのが現状です。そのため、家族は日頃の親の生活習慣を把握しながら、親の生活を支えてくれている人達と関係性を良好にしておくことが大切になります。

その上で、日頃の親の様子を尋ねたり、何か異変を感じた時には家族に連絡してもらえるように連絡先を渡しておいたりするだけでも十分です。

このように、マンパワーを活用する時は、まず家族が親の生活習慣をしっかりと知ることが大切になります。特に、要介護・要支援状態ではなく、自立している親こそ地域の人達の協力が、家族にとって大きな助けになるはずです。

まとめ

一人暮らしになった親を見守る方法には様々なものがありますが、どれも親の生活習慣にそぐわなければ効果を発揮することはできません。例えば、緊急通報システムを導入したとしても、機器を使いこなせなければ通報することもできないですし、親が家に他者を入れることに対して強い拒否がある場合は後々問題になります。

また、緊急通報システムは「親の緊急事態発生を知らせることが目的」とされているのに対して、見守りシステムは「親が普段通りの生活をしていることを家族に知らせることが目的」としているという違いがあることも踏まえて選択することが大切です。

ぜひ今回の「一人暮らしになった親を見守る3つの方法」を参考にして、家族でよく話し合って、親の生活習慣に合った方法を選択して下さい。

以下に、提供機関ごとの緊急通報・見守りシステムの概要を記します。

緊急通報システム名または提供機関 緊急通報システム 見守りシステム 月額基本料金 サービス内容
i-potみまもりほっとライン」

象印マホービン株式会社

×
親の緊急時に通報はできない

i
ポットの使用状況で安否の確認ができる
3,000/
(税別)
iポット(電気ポット)を使うと家族の携帯やパソコンに情報が入るようになっている
「つながるライト」

ボクシーズ株式会社

×
親の緊急時に通報はできない

専用ライトのON/OFFで安否の確認ができる
電球1個
2000~3000円
iotを活用した安否確認

ライトの点灯の異常を見守り者に連絡する

ガス会社

 (契約のガス会社に確認してください)


地域によっては警備会社と連携している所もある

ガスの使用量が携帯やパソコンで確認でき、異常を見守り者に連絡する
(西部ガスの場合)
緊急通報
540円/月
見守り
1340円/月
ガスの使用量が携帯やパソコンで確認できる

使用量の異常を見守り者に連絡する

電気会社

 (契約の電気会社に確認してください)

地域によっては警備会社と連携している所もある


電気の使用量が携帯やパソコンで確認でき、異常を見守り者に連絡する
測定機器本体
29800円
通信料
約2000円/月
電気の使用量が携帯やパソコンで確認できる

使用量の異常を見守り者に連絡する

「みまもりサポート」

ALSOK(アルソック)


緊急通報装置のボタンを押すだけで駆けつけてくれる

センサーを設置し異常の見守りができる
緊急通報
2400円/月(税別)
見守り
710円/月(税別)
トイレなど生活で必ず通る場所にセンサーを設置し、一定時間動きがない場合は異常信号をALSOKに送信し、ALSOKのガードマンが確認する
「みまもりカメラ」

ソフトバンク

×
親の緊急時に通報はできない

カメラの映像と音声で安否を確認できる
467円/月
(別途通信料がかかります)
自宅に設置したカメラの映像と音声を携帯端末を使って確認、会話のやり取りができる
市区町村
ペンダント型の緊急通報装置
(自動火災通報装置もあり)
×
日常生活の見守りはできない
レンタル料
約2500~5000円/月
(所得により金額が無料になる場合もある)
体調の不良があった時にペンダント型の緊急通報装置を押すことで駆けつけ員へ連絡がいくようになっている